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サンタの格好をしたストリップ嬢のおっぱいに「メリークリスマス」とつぶやいた夜――爪切男のタクシー×ハンター【第十六話】

 話をクリスマスに戻す。  我が家には二つの教育方針があったので、サンタも二人存在していた。親父サンタと祖母サンタである。サンタからのプレゼントは二つ。サンタへのリクエストも二つできる。その点は他の子供よりも恵まれていた。二つのリクエストは有効に活用するしかないということで、物質的なプレゼントと気持ちのプレゼントを要求していた。親父サンタには「エアガン」、祖母サンタには「お母さんのおっぱいが吸いたい」というリクエストを紙に書いて靴下に入れていた。  私のリクエスト通り、親父サンタからは毎年エアガンが届いていた。祖母は毎年クリスマスの夜だけ、私に自分のおっぱいを吸わせてくれるようになった。「お母さんのを吸うみたいに吸ってごらんね」と言って、自分のしなびたおっぱいを出してきた。私はチューチューと祖母の乳首をただ吸った。記憶が曖昧だが、おそらく小学校高学年に上がる辺りまで、私は毎年祖母のおっぱいを吸っていた。  どんな男にも乳離れをする時はやってくる。  祖母のおっぱいから卒業した私はエアガンを手に取った。反抗期のはじまりが男のはじまりだ。私の場合は、エアガンで親父を狙撃するといった遠距離からの反抗期だったが、それはそれでいい。反抗しないよりマシじゃないか。親父サンタが毎年送ってくれたエアガン、もとい銃。その銃で親父を撃つ。自分が贈った銃で我が子に撃たれた時の親父の気持ちはいくばくであったろうか。いや、でもそれが西部の掟なのだ。人生は非情であるべきだ。私の乳離れと共に我が家のクリスマスは静かに終わりを告げた。  どんなクリスマスを過ごしていようが、私は今ここに、こうして生きている。それが一番大事なのだ。
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仕事を終えた私は、ストリップ劇場に足を運んだ
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死にたい夜にかぎって

もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!

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