恋愛・結婚

女を買っタラ、ボトルを入れレバ、それで男は幸せなのか?――鈴木涼美のおじさんメモリアル

「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは自らを饒舌に語るのか』(青土社)、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)などの著作で「性を商品化する」女性たちの内面を活写し注目されている文筆家の鈴木涼美が、「おじさん」をテーマに日刊SPA!で連載する「おじさんメモリアル」。ついに最終回!


【最終回 東京おじメモ娘】

 先日、いつもの歌舞伎町のレタスしゃぶしゃぶの店で隣の座敷に座っていた派手目な女の子二人の話が面白かったので、思わず一緒にいた3個下の友達と聞き耳を立てて一部始終聞いてしまった。やや語尾に脚色は入っているが大体こんな感じだった。

「昨日。本当に来てたね、タムラさん」

「よく来れるよね、店で指名嬢切れるのもう3回目だよ」

「割と新しく入った婆でしょ?昨日指名してたの」

「別にアヤさん自体はそんな悪い人じゃないっぽけどね。タムラが帰り際、フロントのとこで私とすれ違ったらしくて、私からすればそんなの気づいてもいないけど、そしたらタムラがアヤさんに『見た?今のあいつの顔?怒ってるのかな?まじウケる』とか『嫉妬は見苦しいね~』とか『よく見るとやっぱブスだな』とか言ってきたらしいよ。こっちは興味なくて見てもないっつーの」

「それ言ってくるアヤさんもアヤさんだけどね」

「いや、私ほんとあいつが誰指名しようが何しようがどうっでもいいの。気持ち悪いし。てか、切ったのこっちだしね。俺が切った、あいつは未練がある、みたいな態度がマジでウザいだけ」

「というか、本当にただただ思うんだけどサァ、別の店行けばいいのにね」

「そうだよ。日本中にうちの店しかキャバクラがないわけじゃないのにさ」

「歌舞伎町だしね。いくらでもあるじゃん。3回指名変えるくらい誰でもいいわけでしょ?」

「私の前がアイちゃんでその前ランさん。アヤさん含めて、統一感ないよね。ランさん指名はミーハーっぽいけど」

「一年間くらい? 来始めて」

「いやいやいや。一年経たないよ。初キャバクラが去年の夏じゃない? 取引先かなんかに連れて来られてキャバデビュー。それでランさん指名で週一は必ずくるようになって、マネージャーと仲良くなって調子乗っちゃって、態度でかくなって、ランさんにウザがられて。でも勘違いだからランさんの口車に乗って付き合えると思って誘いすぎて、電話しすぎて明け方にランさんの同棲彼氏、●店のホストだけど、その人が電話出てキレられて、それをマネージャーにチクって指名替え。で、アイちゃん指名したんだけどそれもまた異常に迫りすぎてアイちゃんがあんまり出勤しないのを、男といるとか疑ってまた指名替え。うちも、最初ボーイだかマネージャーに勧められたとか言っていきなり指名してきて、ずっとお家おいでとか、そういう風に見れないならお店来れなくなるかもとか言うし、めんどくさいから最後に『絶対お家行く』って言ってドカンって使わせて潰れたふりして着拒したの。そしたら前に連れて来た後輩使って探り入れて来たり、店の前まで来てボーイに話しかけたりしてマジでイタいと思ってたら、いきなりこないだヘルプ付いてたアヤさん指名」

「何がしたいんだろうね。女の子同士がどれくらい情報共有してるかとか、悪口言われてるだろうかとか考えないのかな?」

⇒この続きは連載をまとめた単行本「おじさんメモリアル」で

【鈴木涼美(すずき・すずみ)】
83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。09年、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)発売中。現在は日経新聞を退社し、執筆業を中心に活動。幻冬舎plusにて「愛と子宮が混乱中 夜のオネエサンの母娘論」を連載中。LINEブログはhttp://lineblog.me/suzukisuzumi/

(撮影/福本邦洋 イラスト/ただりえこ)

おじさんメモリアル

著者が出会った哀しき男たちの欲望とニッポンの20年
日刊SPA!の連載を単行本化


「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか

慶応大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修了。本書がデビュー作。

身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論

「お乳は生きるための筋肉」と語る夜のおねえさんの超恋愛論





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