盗まれた仮想通貨の被害届、警察は出してくれないの?――「お金0.0」ビットコイン盗まレーター日記<第3回>
刑事「あー…どこもいっぱいだねぇ…」
僕「え」
刑事「ここでいいですかね!」
僕「ここ」
僕、机、刑事@エレベーターホール
この感じ…相棒じゃない…。コントだ。
刑事「…それで、どのような被害に遭われましたか」
僕「仮想通貨が盗まれました」
刑事「…ごめんね。私は仮想通貨を全く知らなくて。2、3聞いてもいいかい?」
僕「はい」
刑事「その仮想通貨は、現実のお金と同じようなものなのかな」
僕「はい。取引所で日本円に替えることができます」
刑事「なるほど。被害額は?」
僕「日本円で、700万円です」
刑事「えー・・・どうやって盗まれたの?」
僕「僕のアカウントがハッキングされて盗まれました」
刑事「そうか…何か…証拠になるようなものはあるかな」
僕「僕のアカウントに見知らぬログイン履歴が残っています」
刑事「見せてもらってもいい?」
僕「はい」
チラリ
刑事「なるほど」
僕「…」
刑事「…」
僕「あの、ここ見てください。このログインは、僕じゃないです。ほら、ここだけWindowsですよね」
刑事「普段は、どれ?」
僕「このiPhone XとMacbook Proです」
刑事「なるほど・・・。それで…盗まれた手口は?」
僕「犯人は、僕のアカウントを乗っ取り、僕の持っている仮想通貨を全て日本円に替え、日本円を全てビットコインに替えて、そのビットコインを別の口座に送金したんです」
刑事「おお!振込先が分かっているんだ!!」
僕「はい。わかります」
刑事「それなら振込先を調べてみようよ」
僕「はい。これが送金先アドレスです」
刑事「これ、なに?」
僕「相手のウォレットです」
刑事「うぉれっと・・・・・・」
僕「送金先アドレスがわかっていても、誰のものか特定するのは、難しいと思います」
刑事「なんで」
僕「ビットコインは、管理者がいなくて、P2Pネットワークを介してみんなで管理しているからです」
刑事「なるほど・・・。じゃ、知能犯担当に詳しいことを聞いてきます。ちょっと待っててね」
僕「はい!お願いします」
やっと、やっと取り合ってもらえた。これで知能犯担当の人に伝われば、少しは進展するはずだ。
(5分経過)
エレベーターを使う警官たちが横目で僕を見る。気持ちはわかる。僕もこの場所はおかしいと思うんです。
(15分経過)
さっきの警官たちが復路でも僕を見る。そうなんです。まだいるんです。
(さらに5分経過…)
僕「・・・」
(5分経…
(いでの・たつや) 1994年、兵庫県生まれ。元かけだし俳優、高校卒業と同時に上京。文学座附属演劇研究所卒業後、エキストラ出演やアルバイト勤務を華麗にこなし、たまたま仮想通貨で得た大金を秒速で盗まれる。Twitterアカウント(@tatsuya_ideno)
記事一覧へ
記事一覧へ
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ