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漫画化決定で舞い上がる、仮想通貨盗まれた男――「お金0.0」ビットコイン盗まレーター日記〈第15回〉



ミーティング当日、Aさんが車で僕の家まで迎えに来てくれた。僕の家からBさんのオフィスまでは車で5分だ。

車内A「オハヨウ。いよいよですな」

僕「はい。なんというかもう、感無量です。盗まれてからこんな短時間で僕が主人公のマンガが出るなんて、やっぱ僕もってますねぇ…」

A「……」

僕「マンガってことはやっぱり文章よりも読者多いですよね。漫画家さんいままでどんな作品書いてたひとなんだろう。あ、あと脚本って文章の連載そのままでいいですかね? なんかこう、マンガ向けに変えたりとか、もっと一般受け狙ったりしてもいいんじゃないかなーって思ってたんですよ」

A「たつや」

僕「はい?」

A「ミーティングまで時間がないから手短かに言うけど、いま手伝ってくれている方々はみんな何かのプロで、君は何者でもない。単なる、脇の甘い被害者だ。そしてその舞い上がりがちな性格も、プロに対する敬意のなさも、都合よく考えがちな素人によくある傾向で、ここからは完全に改めたほうがいい」

僕「は…はい」

A「あとこれ、今日の会議が始まったらすぐに出すんだ」

僕「ハ、ハッピーターン…」

A「そう。ハッピーターン。題材の主人公になる人間は各界のプロにあれこれクチ出してる場合じゃない。気づかいと、途中経過や成果物に対する絶賛が名作を生み出す。

 とはいえ初めてお会いする方に恭しく何かを持っていくと、逆に先方を恐縮させてしまうこともある。だからこそハッピーターン。ビットコインを盗まれた男がナケナシのお金で買ってきた感のあるハッピーターン。ツッコんでもらいやすいスキを作って、全員から秒速で突っ込んでもらい、その場の空気を一気に解放するのが題材となった人間の役割だ」

僕「あ、あの…」

A「ん?」

僕「Aさんは…なんでそこまでしてくれるんですか?」

A「言っただろ。いまんとこ、面白いからだ」

僕「いまんとこ…」

A「いまんとこ」

僕「じゃあ、もし、僕がおもしろくなくなったらもう手伝ってもらえないということですか」

A「俺がおもしろいとおもってるのは君じゃなくてこのチームがこれから作るものだ。だからもしこの流れを止めたくなかったら、チームから見て助け甲斐があるかどうかのほうが重要だ。つまり2分前の君の発言はなんとも幼稚であさましい。この車に助手席射出ボタンがついてたら車の外に放り出してたとこだし、次回までにつけとく」

僕「わかり…ました…」

A「あ、あと言い忘れたけど」

僕「はい」

A「読者のほうが達也よりよっぽどプロだ。そのうちわかる」

僕「はい…」

A「どっから駐車場入るんだろね。これ」


次号へつづく

(いでの・たつや) 1994年、兵庫県生まれ。元かけだし俳優、高校卒業と同時に上京。文学座附属演劇研究所卒業後、エキストラ出演やアルバイト勤務を華麗にこなし、たまたま仮想通貨で得た大金を秒速で盗まれる。Twitterアカウント(@tatsuya_ideno
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