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ラジオのハガキ職人をブチ切れさせた僕の教訓――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第11話>

カムチャツカ半島から返ってきた驚愕のレス

 いよいよ放送が始まった。そして、問題のメッセージコーナーがやってくる。1つ、2つとメッセージが読まれる。無難な失敗談でありながら、DJの話が広がっていく。今なら分かる。こういうメッセージが読まれやすいのだ。尻子玉とか書いてたら絶対に読まれない。この無難さなら、僕のもいける。 「お、初登場かな。〇〇市のゴンザレス田中さんからのメッセージ。今朝のことなんですが、間違えて歯磨き粉でカオを洗っちゃいました。あれ、ややこしいですよね。朝から失敗して少しトーンダウン、でもスーッとして結構気持ちよかったですよ。リクエスト曲はZARDの『負けないで』をお願いします」  つ、ついに、読まれた!  全身に電流が走った。ついにやった。僕はやったのだ。銀色のラジオの前で涙ぐんでいる自分がいた。  そこにメールがやってきた。きっと師匠からだ。お祝いのメッセージに違いない。ありがとうございます。師匠のおかげですよ、そう返信しようと思った。 「次やったら破門だって言っただろ! 番組に下ネタ送ってんじゃねえ! 殺すぞ!」  めちゃくちゃ怒っていた。 「いや下ネタじゃないですよ」  カムチャツカが何を言ってるのか分からなくて反論するのだけど、もう何も聞いてくれない。 「ゴリゴリの下ネタじゃねえか!」  全く会話にならない。 「下ネタじゃないですよ、どこが下ネタだっていうんですか」  僕もちょっと怒りながら反論した。すると、カムチャツカ半島から驚愕の言葉が帰ってきた。 「テメー、間違えて歯磨き粉でサオを洗ったって送ったろうが。ゴリゴリの下ネタじゃねえか」  サオじゃねえ、カオだ、カオ。  なんで歯磨き粉でチンポ洗ってスーッとして気持ちよかったなんてラジオに送らないといけないんだ。 「サオじゃないですよ、カオですよ。そもそもどう間違えたら朝からチンポコ洗うんですか。そもそもそんなもの読まれないでしょ」  などと反論するのだけど、カムチャツカは聞き入れない。こうして、僕は歯磨き粉でサオを洗ったことによって破門になったのだった。  普段穏やかに、無難に生きているおっさんほど、突如として訳の分からないことで怒り狂うことがある。そこには注意して生きていきたいものだ。  ちなみに、師弟関係解消後の番組テーマは「これって私だけ?」だったのだけど、 「これって私だけですか? ロシアのカムチャツカ半島の形ってサオに似てませんか?」  と送ったけど、読まれることはなかった。 【pato】 テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。ブログ「多目的トイレ」 twitter(@pato_numeri
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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