安倍首相の外交は中曽根内閣の劣化コピーとしか思えない――倉山満
それより、「共産党はファシズム」と聞いたら、ピンときてほしい。中華人民共和国はファシズム国家ではないのかと。
その通りだ。
それどころか、中華民国も国民党が支配するファシズム国家だった。戦前戦中はもちろん、台湾に逃れた戦後もずっと国民党一党支配だった。
それが崩れ、民主化が行われたのは’90年代だ。
では、大陸は?
経済では共産主義を捨て資本主義を導入して久しく、その成果か世界第二位の経済大国になった。中国人が公表する数字など中国人すら信じない。今やエコノミックアニマルの称号は中国人にこそふさわしかろう。良くも悪くもたくましい。拝金主義が染みついているので、共産主義より今の方が性に合っているのだろう。
一方、政治体制はというと、共産党の一党支配は強固なままである。富の公正配分など最初から考えず、富める者はますます富み、弱い者は徹底的に絞りとられる。不平不満が爆発しそうになると、少数民族を弾圧してガス抜きをする。
かつてのソ連、あるいはナチスドイツと、どう違うのか? 少なくとも「人を殺してはならない」という価値観が通じないという点で、まったく変わらない。
そんな中国に先日、わが国の総理大臣であらせられる安倍晋三閣下がご訪問あそばされた。何をしに行ったのかと思いきや、パンダのレンタルを頼みに行ったとか。久しぶりの首脳会談実現に、朝日新聞までが大絶賛だ。安倍首相は外交上手と言われるが、本当だろうか。むしろ中国に警戒されていないから朝日までが絶賛していると危機感を持つべきではないか。
よほどの安倍信者でなければ、まさか陸奥宗光や小村寿太郎と並べたりはしないだろう。では現実的にはどの程度だろう。似ている境遇にあるのは中曽根康弘か。中曽根内閣の時は「強いアメリカ」を掲げるロナルド・レーガンが、ソ連の打倒を掲げて本当に実現した。これにヨーロッパ諸国は協力し、一致団結して軍拡競争に邁進した。中曽根は「ロン・ヤス関係」を築いたと言われる。では、どの程度の防衛努力をしたか。GDP1%枠突破を誇っていた。他の国が「最低2%。4%や7%も辞さず」という時代に、である。レーガンとしても内心は腸が煮えくり返っていただろうが、まさか日本を敵陣営に回すわけにはいかない。
では、安倍総理は? ドナルド・トランプが「最低2%」を求めているのに、「防衛費0.95%枠」を守っている。
戦う気があるのか?
外交とは仲良くすることではない。己の意思を相手に押し付ける戦いだ。それには力が必要だ。軍事力なき外交など無力でしかない。
こうした基準で考えると、安倍外交など、中曽根内閣の劣化コピーとしか思えないのだが。
それとも安倍首相に戦う姿勢を求めるのが、筋違いなのか。
―[言論ストロングスタイル]―
皇室史家。憲政史研究家。1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『噓だらけの日本近世史』が2月28日より発売
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