勝谷誠彦氏は仕事に厳しかった。いい加減な言論には左右関係なく容赦なかった/倉山満
その後、私が『嘘だらけシリーズ』を出すたびに、私が主宰するインターネット番組『チャンネルくらら』でキャンペーン番組をやっていただいた。もちろん大好評で、おかげで同シリーズは私の代表作となった。大恩人だ。
私のほうも勝谷さんが主宰するインターネット番組「血気酒会」に何度か出演させていただいた。
ある会では朝日新聞の慰安婦報道が捏造だった事件を取り上げたのだが、この番組はその名の通り日本酒を飲みながらの生放送という、ネットとはいえ危険で無茶な番組だ。勝谷さんも舌鋒鋭く朝日新聞の捏造を批判されていたが、なおも紙面で言い訳をしている朝日新聞の女性論客を指さしながら私も「BU●●!BU●●!BU●●!」と、カメラに向かって番組最後の5分間罵倒し続けるという暴挙をやらかしてしまった。
苦い思い出だが、勝谷さんが自分でやったわけではないのに番組終了後、「タジマさんに怒られる~」と頭を抱えていたのを思い出す。敵を作るのを恐れない一方、八方に気を遣う繊細な人だった。
ちなみに既に出来上がった私が「タジマさんって、どのタジマさんですか」としつこく聞いたのは、大人げなかったと今でも反省している。
こうした脱線も含めて、2人の対談をまとめたのが、『頑張れ!瀕死の朝日新聞』(アスペクト、2015年)だった。
出版記念に2人で八重洲ブックセンターにてサイン会をやったのだが、勝谷さんの到着は1分前。打ち合わせも何もないのだが、それでも成立するのだから、名コンビだったと密かに自負している。
同書の題名からして、毒は含んでいるが、愛もまた含んでいるのがわかるだろう。勝谷さんは、朝日新聞への痛烈な批判で知られたが、他人の悪口を言って留飲を下げるような、いわゆるネトウヨとは一線を画していた。そういうところも、気が合ったのかもしれない。僭越だが。
本誌連載コラムをまとめられた『この国を亡ぼすバカとアカ』(扶桑社、2016年)では、帯に一文を寄せさせていただいた。名誉なことである。
まだ一昨年のことなのだが、2017年4月に兵庫県知事選挙に立候補、7月に落選している。今だから明かすが、相当に破滅的な行動だったと思う。
公表された政策は、「いつの間にこんなに県政を勉強していたのだ」と思うほど、緻密に練られていた。御本人は「ブレーンが良かった」と謙遜されていたが、良質なブレーンは頭が良くて勉強熱心な候補者のところにしか集まらない。思うところがあったのだろう。私財を投じて億の選挙資金を使ったとのことなので。
私は渡世の義理と手弁当で兵庫に馳せ参じたが、「ニコニコ動画で番組をやるので来てくれ」とだけ言われていた。早い時間に到着したので待機していたが、傍にいた誰かが「放送開始19時になっていますよ」と告げる。私は「そんなバカな! 公選法で許された20時までは候補者は活動をしているだろう!」と思って18時に事務所に確かめると、「既に飲み屋で一杯やってます」とのこと……。
慌てて駆け付けた19時からの放送では私の「出馬動機は?」との紋切り型の質問に、「暇だから」との即答。相当、イラツキもあったのではないか。
知り合いに寄せたメールでの本音の出馬声明では、「功山寺決起」を自任されていた。幕末、高杉晋作がたった一人で3000人の敵を相手に決起した事件である。メールは完全に檄文で、とても世間に公表できるような代物ではない。間違いなく、受け取った関係者は困惑するしかなかったと思う。むしろ、保守を自称する人々のほうが冷たく揶揄していた。
聞くところによると応援に駆け付けたのは私一人、他には当時落選中の杉田水脈代議士の後援者が陣中見舞いをしたくらいか。意外だが、有田芳生参議院議員の為書(祈必勝、と壁に張ってあるアレ)があった。
等々、思い出を語り出せばキリがないが、「早すぎる死を惜しみます」などという通り一遍の弔辞など好まない方だった。
最後に。勝谷さんは「保守とは教養である」とおっしゃられていた。普通の日本人の多くが賢くあることで、くにまもりにつながるのだと信じて。そのための仕事を若いものが引き継いでいかねば。
合掌。
―[言論ストロングスタイル]―
皇室史家。憲政史研究家。1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『噓だらけの日本近世史』が2月28日より発売
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