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ファーウェイ美人CFO逮捕のウラ側は…米中「5G戦争」のゆくえ

Huawei CFO Meng Wanzhou

カナダのバンクーバーで12月1日に逮捕されたファーウェイの孟晩舟CFO 写真/ABACA PRESS/時事通信フォト

 しばらくは、「人質外交」という名の報復合戦が続くのか――?  12月11日、米国当局の要請を受けカナダで逮捕拘束されていた中国通信機器大手「ファーウェイ」(華為技術)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)の保釈が認められた。保釈金は1000万カナダドル(約8億5000万円)。7冊保有していたとされるパスポートはすべて押収され、自宅からの外出制限やGPSの取り付けも義務付けられるなど、今後は24時間監視の下、事実上の軟禁生活を強いられることとなる。  一方、孟氏の後ろ盾である中国政府も黙ってはいない。孟氏の逮捕が伝えられた直後に、中国国内に滞在していたカナダ人の元外交官、M・コブリグ氏の身柄を拘束。その後、実業家のM・スパバ氏の行方もわからなくなっている。中国のSNSでは米国アップル社製のiPhoneを破壊する映像が拡散されるなど、米国製品の不買運動も広がっており、今後、米中の対立はますますエスカレートしそうな気配だ。ITジャーナリストの三上洋氏が話す。 「現在、中国のファーウェイとZTE、そして、米国のクアルコムとインテルの4社が5G(第5世代移動通信システム)市場の主導権を握りつつあり、これに、スウェーデンのエリクソンやフィンランドのノキアが追っているかたち。つまり、世界的に見れば欧米vs中国の2大勢力が争う構図であり、今回の米中間の衝突は、5G時代を目前に控えた覇権争いに他ならない。  もともとファーウェイは通信機器メーカーで、携帯電話の基地局やセンターの交換設備といったコアネットワークの分野で世界シェア1位。そんな巨大企業が基地局や交換設備を担うことになれば、携帯電話ネットワークの“生殺与奪”を握られてしまうのと同じです。  先日発生したソフトバンクの通信障害は、エリクソンが交換器の電子証明書の更新を忘れたという初歩的ミスが原因でしたが、それでも11か国で約6時間にもわたって携帯電話が使えなくなってしまった。つまり、ファーウェイが5Gの覇権を握ることになれば、これと同じことを意図的にやれてしまうのです」 米国のターゲットとなった中国企業 米国は中国企業4社(ファーウェイ、ZTE、ハイクビジョン、ダーファ・テクノロジー)をすでに標的にしているが、日本も、豪州、ニュージーランドと共に米国に追随する格好で、早々に中国企業の「締め出し」に乗り出した。  10日、政府は名指しすることこそ控えたものの、中央省庁の情報通信機器を調達する際にサイバー攻撃など安全保障上のリスクを考えてファーウェイとZTEの製品を、事実上、排除する方針を決定。ソフトバンクなど大手キャリアも、5G時代に対応する通信基地局に中国製品を採用しないことを発表した。  2019年にスタートする5Gは、①現在の4Gに比べて実効通信速度が100倍となる“超高速”に加え、②1平方k㎡当たり1万台の端末を同時に繋ぐことができる“同時多接続”、さらには、③通信の遅れが4Gの0.5秒に比べて、わずか0.01秒という“超低遅延”が最大の特徴だ。果たして、5G市場の開拓で一歩リードする米中両国は、これらの技術をどのように応用しようと考えているのか? 三上氏が続ける。 「例えば、これまでの携帯端末ではデータ通信しかできなかったが、生活や産業、ビジネスなど、さまざまなインフラと繋がるようになる。インターネットであらゆるモノと繋がるIoTも5Gなしには成立しないし、コネクテッド・カーの自動運転に代表される無人化技術にも必須のテクノロジーです。  5Gで通信が可能になるモノのなかには、当然、戦車や戦闘機、ロケットなどの兵器も含まれる。100機超のドローンで敵の艦船などを同時に爆撃するドローンの飽和攻撃も、低遅延で正確に動き、かつ同時に多数の端末をコントロールできる5Gなしには不可能です。5Gによる超低遅延で超高速な大容量のデータの通信は、既存兵器の精度を向上させ、高度な遠隔操作も可能になるのは間違いない。  ただ、通信機器による情報の盗み出しは中国に限ったことではなく、米国家安全保障局にいたスノーデン氏が暴露したように、米国もこれまで全世界で行っていた。GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)も個人情報を取り放題で、各国で規制する動きも出ていますが、これらの企業はグローバル企業なので、たとえ米国政府が情報提供を求めても耳を貸さないでしょう。ところが、中国政府は『官民融合』を強力に打ち出している。危険を伴うと言わざるを得ない……」  三上氏の指摘通り、中国では今年に入って「反スパイ法」や「インターネット安全法」が次々と制定されるなど一段と締め付けが厳しくなっていた。なかでも、6月に施行された「国家情報法」は、国家主権の維持や領土保全を理由に、情報工作員が立ち入り制限区域へ入ることを許可するもので、企業や個人にはその「協力義務」が課せられている。つまり、ファーウェイが民営企業であろうとも、中国政府が情報提供を要請すれば、ファーウェイが持つビッグデータを思いのまま手に入れられることになるのだ。
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まったく見通しが読めない5G戦争
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