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米中衝突、関税バトルの行方 チキンレースに勝つのはどちらの国?

米中衝突 血で血を洗う終わりのない関税バトルは、ついに“最終章”のページを開いた……。  5月13日、米通商代表部(USTR)は、中国からの輸入品のほぼすべてに制裁関税を拡大する第4弾の詳細を発表。対象はスマートフォンやPC関連製品など3805品目に及び、最大25%の上乗せとなる。発動は6月末以降となる見通しだが、攻撃の手を緩める気配のない米国は、15日にも中国通信機器最大手「華為技術」(ファーウェイ)に事実上の輸出禁止措置を発動。5G(第5世代移動通信システム)導入直前に、中国の産業育成策「中国製造2025」を牽引するファーウェイを狙い撃ちしたことで、米中対立がさらに激しさを増すのは必至の状況だ。  だが、高関税政策は「諸刃の剣」とも言われている。ファーウェイが公表した主要取引先92社のうち、インテルやクアルコムなど米国企業は30社を超え、地域別に見ると調達額は最大で年間100億ドル。米国市場では、ファーウェイへの輸出依存度が高い半導体企業の株が投げ売りされるなど混乱が広がったが、果たして、国家の威信を懸けたこの壮大なチキンレースに勝つのは米中どちらの国なのか? 経済評論家の渡邉哲也氏が話す。 「制裁の応酬は、米中両国ともに国内物価を上昇させ、個人消費を冷え込ませることになるでしょう。ただ、貿易依存度は米国の約20%に対して中国は約33%と影響が大きい。中国の輸出品もほとんどが中国以外の国のものと代替が利くので、これを機に多くの企業が生産拠点を中国から別の国に移すことを表明しています。中国経済は米中衝突以前から腰折れをきたしており、今回の制裁のダメージは計り知れない。  一方、米国への影響はあくまで一時的なもので、中国からの報復関税にも耐えられると踏んでいる。昨年6月に第1弾の制裁を発表したときから、企業は制裁発動に備える猶予期間と捉え、ここに至るまでに世界のサプライチェーンから中国を外す方向で動いていた。関税収入も’17年の352億ドルから’18年には497億ドルと急増しており、これに第3・4弾の25%を上乗せすれば、莫大な税収になる。経済が好調な米国には利下げに踏み切る余裕もあり、トランプ政権は制裁合戦の副作用をコントロールできると考えているのです」  米中のせめぎ合いは単なる貿易戦争ではなく、5G時代の到来を前に起こるべくして起きた「覇権争い」と捉える声も少なくない。東京福祉大学国際交流センター長の遠藤誉氏もその一人だ。 「トランプ大統領は、何としても『中国製造2025』を阻止しなければ、近い将来、米国は中国にハイテク分野で負けてしまうと考えている。’30年には中国のGDPが米国を上回ると見られており、ハイテク分野でも中国の後塵を拝することになれば、米国が世界のトップの座から引きずり下ろされるのに等しい。  中国は近い将来、米国と世界の覇権を争う日がくることを見越して、一帯一路の参加国やアフリカ53か国を囲い込み、『人類運命共同体』と唱えて、彼らとともにグローバル経済圏を構成するよう着々と準備してきた。  直近の’19年第1四半期の中国の貿易データで特徴的なのは、民間企業の輸出入増加が11%と高い伸びを示したことと、貿易相手国の多様化。なかでも、一帯一路沿線国との貿易額は2.73兆元(約45兆円)と飛び抜けて増加し、前年比9.1%の伸びを見せている。中国はこの数字を重視することで『米国の脅しなど痛くも痒くもない』と言外に主張しているのです」
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米国寄りか中国寄りの国に世界は二分される
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