アハモ月額2980円。ドコモの料金引き下げ、長期的には消費者が不利になる線も
さよならau――12月9日、KDDIが新料金プランを発表するとSNS上にはこんなフレーズが溢れた。「高すぎる」というのが最大の理由だ。実際、新プランの“定価”は月額9350円と少々高額。ただし、データは使い放題で動画配信サービスの「Amazonプライム」や「TELASA」は見放題。さらに、家族4人の利用で適用される家族割や固定回線とのセット割、5G切り替えに伴う期間限定キャンペーンなどを加味すると3760円に抑えることも可能だ。
それでも炎上騒ぎにまで発展したのは、12月3日にNTTドコモが発表した新プラン「ahamo(アハモ)」のインパクトが強すぎたからにほかならない。経済評論家の加谷珪一氏が話す。
「アハモは月額2980円でデータ量20GB、さらに5分以内の通話はかけ放題という驚異的安さを実現したプラン。家族での加入といった余計な条件設定もない。格安なうえにシンプルなため、従来の料金システムを踏襲したauの新プランのデメリットが際立ってしまった格好です。
ただ、ドコモとしても想定外だったことがあります。それは、11月にKDDIのサブブランドであるUQモバイルとソフトバンク系のワイモバイルがデータ量20GBで月額3000~4000円の新プランを発表したのに対して、武田良太総務大臣から『メインブランドの値下げをしないのは問題』と物言いがついたこと。
これを受けて、サブブランドとして発表するつもりだったアハモを、急遽、新料金プランに切り替えて発表したのではないでしょうか。というのも、これまでの料金プランでは契約回線数に応じて割引が適用されたのに、アハモ分は家族が契約した回線としてカウントされず、割引の適用外。ドコモとは異なるサービスだと言わんばかりのプランなのです」
ドコモの現在の主力プランである「ギガホ」(データ量30GB)は、2年縛りの定期契約なしで月額7150円。家族で3回線以上の契約などの条件を満たせば月額3980円になるが、最大6か月の期間限定料金にすぎない。なぜ、自社の既存プランと比較しても圧倒的に安く、シンプルな料金体系を実現できたのか?
「ドコモはアハモの申し込みやサポートをオンラインで完結させ、人件費をかけないようにすることで低価格化を実現すると言っています。しかし、オンライン化を進めても、ドコモショップの体制を縮小したり、社員数を大幅に減らすことはできません。既存の利用者はKDDIやソフトバンクと比較して高齢の方が多く、対面サポートのニーズが高いからです。
そもそも、通信キャリアは総じて人件費よりも、通信設備の維持・管理コストが圧倒的に高い。ドコモの設備の減価償却費は年間5800億円で、メンテナンスに要する作業委託費は4600億円。光熱費だけでも年間500億円になります。これら継続して発生するコストが莫大なので、人件費の削減効果はたかが知れているのです。
突き詰めると、利益を削るのを承知で打ち出したプランと言えるでしょう。それを可能にしたのは、TOB(株式公開買い付け)を通じたNTTによるドコモの完全子会社化です。仮にドコモが赤字に転落しても、連結決算で黒字が維持できればいいという体制に切り替わったわけです」
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