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「枝野幸男ある限り、絶対に負けない」が自民党の合言葉だ/倉山満

安倍晋三は「トランプ内閣の外務大臣」

 そんなグダグダの日本政治に怒り心頭の人物がいる。アメリカ大統領のドナルド・トランプだ。トランプが日米安保条約は不公平だと漏らしたとの報道が伝わり、日米双方の政府が否定した直後、テレビのインタビューで大統領自身が、「アメリカは日本を守らねばならないが、日本はテレビでそれを見ているだけだ」と答えた。  G20が迫っていたので、外交的駆け引きの側面もあっただろう。しかし、本質はそこにはない。  第二次世界大戦後、アメリカは世界の覇権国としてあらゆる地域の紛争に介入し、そこらじゅうで恨みを買ってきた。若者の血とアメリカ国民の富を失った代わりに、ウォール街の一部特権階級だけが肥え太る。その連中は中国とも平気でつるむ。  トランプは、こうした秩序を変革すると宣言して大統領に当選し、着々と実績をあげてきた。だから、世界中の指導者を敵に回している。そんな中、安倍晋三は、お友達の数少ない一人だ。確かに「トランプ内閣の外務大臣」としての役割は果たしている。先のイラン訪問で明らかなように、外務大臣というより「子供の使い」が実態だろうが。  トランプの対日原則は明確だ。第二次大戦後のアメリカの政策を根本的に変更しようとしている。日本占領時のハリー・トルーマンから前任のバラク・オバマまで、アメリカの対日政策は、「無視」か「弾圧」か「番犬として使う」である。反日大統領なら「無視」か「弾圧」、親日に思われる大統領も結局は「番犬として使う」である。  これに対し、トランプは「対等の仲間になろう」と提言してきた。それが大統領就任前の「核武装も含めて、自主防衛OK」の発言の真意だ。せめて、防衛費をGDPの2%にするくらいの自助努力をしてくれ。それも無理なら、「在日米軍の駐留経費を払え」と言ったのだが、日本では前提条件を無視して報道された。ゼニカネの問題ではないのだ。  ところが、安倍首相はにべもなく断った。安倍内閣で防衛費が過去最高と威張るが、GDP0.9%である。一度も1%を超えたことが無い。軍事抜きで「トランプ内閣の外務大臣」として貢献する、そして中露朝などの周辺諸国のご機嫌も損なわないようにする。それが「大人の態度」だと勘違いしているようだ。  安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を唱えていたのではないのかと訝るかもしれない。たぶん、今でも心の片隅では「できればいいな」と子供の願望のように考えているかもしれない。ただそれだけだ。

マトモな人間は、ヘラヘラして媚び諂う奴を軽蔑する

 仮に自主防衛、日本を自分の国を自分で守れるような国にするとしよう。抵抗勢力は二つ。  一つは財務省主計局である。主計局の仕事は歳出を抑制する、要するに財布の紐をしめることである(それ自体は悪いことではない)。ところが、政治家の野放図な我がままを甘やかして、財政赤字は拡大している。特に福祉が圧迫しているが、それは有権者を敵に回すので切れない。一方、防衛省・自衛隊は最弱小官庁である。抵抗力が少なくて額が少ない。防衛予算を切れなければ、どこを切るのだ? という話になるのだ。  もう一つは内閣法制局。憲法を頂点とする日本国の法体系の解釈を一手に担う。そして日本国憲法の理念に忠実な“神官”のような連中の集まりだ。そんな彼らが、戦後秩序の根幹を覆す、「自前の軍隊を持つ」など許すだろうか。  安倍首相は、法制局や主計局が怖くて、戦う旗を降ろしたのだ。官僚たちにとって、既得権益を犯さない首相ほど都合が良いものは無い。だから、長期政権になったのだ。言うなれば安倍首相は、上司(アメリカ)と部下(官僚)の顔色をうかがう中間管理職だ。  そんな安倍にトランプが本音では業を煮やしていると見るべきだ。マトモな人間は、ヘラヘラして媚び諂う奴を軽蔑する。  地獄に連れていかれるか、否を突きつけるかが問われている。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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