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ユニクロの時価総額は世界第2位…その強さの根拠を数字で読み解いてみた

5年で2倍の成長力。鍵は海外展開

 ユニクロの徹底的な効率化については理解できたと思いますが、それが財務諸表にどのように表れているかを見ていきましょう。  まず見るのは、ユニクロの損益計算書(略して“PL”= profit and loss statement)。PLとは、企業に「出てくるお金」と「入ってくるお金」を示したグラフのことです。  同社は5年間で売上高は約2倍(2013年約1.1兆円→2018年約2.1兆円)、純利益は約1.7倍に増えています(2013年約1000億円→2019年約1700億円)。特に、2017年以降はさらなる経営の効率化を進めて経費を圧縮したため、営業利益率が回復。徹底した利益率改善の姿勢は、P/Lに現れていると言えるでしょう。  また、ユニクロの大躍進を語るうえで、切っても切り離せないのが海外展開です。  2019年8月期の連結業績で、主力のユニクロ事業は海外売上高が国内を超え、19年8月期には同営業利益も海外が国内を上回りました(海外1389億円、国内1024億円)。いったい、なぜここまで海外で成長できたのでしょうか? 答え1:「究極の普段着」がリーチを広げた  1つ目は、ユニクロがめざすLifeWear(究極の普段着)というコンセプトにあります。柳井社長が1980年代後半にユニクロを立ち上げたとき、彼はこんな言葉を残しています。 「服は部品であり、着る人の個性が服を選ぶ。服に個性があるのではなく、着る人に個性がある」  アパレルメーカー側が「今年はこれがトレンド」と偉そうに着る人を選ぶのではなく、人に着る服を選ぶようにさせるということです。具体的に言えば、日常をより快適にする服、着心地が良い服などがそれにあたるでしょう。非日常ではなく日常的にユーザーが求める服を、いち早くつくったことがユニクロの急成を支えたのです。 答え2:小売じゃない。情報製造小売業だ  2つ目の答えは、“情報製造小売業”を目指して進んでいる点です。“情報製造小売業”とは、商品だけではなく、情報も同時に提供すること。製造販売に費やす労力よりも、情報発信・取得に費やす労力が重要になってきます。  ユニクロは、小売業ではなく“情報製造小売業”に転換することで、ビジネスサイクルを今まで以上にスピーディにさせました。市場調査から企画、生産、販売までのリードタイムが大幅に短縮され、消費者が今欲しい商品を確実に早く提供できるのです。 答え3:ネット通販でもアパレル業界の常識を打破  前述した“情報製造小売業”へとユニクロが転換する上で、リアル店舗とネット通販(Eコマース)の融合は、大きな鍵となるものです。現在、同社のEコマース事業の売上構成比は5%程度ですが、将来は30%まで高めることを目指しています。  その成功を左右するのが、配送システムのさらなる改善。前述したようにEコマースで商品を購入した消費者が、当日もしくは翌日に受け取れる配送システムを整備することや、近くのユニクロとコンビニが連携し、商品をコンビニエンスストアで受け取り、返品もできるという仕組みも整える予定だといいます。  すでに、2016年4月に竣工した有明物流センターを皮切りに日本国内で約10ヶ所の物流センターを稼動させたユニクロ。今や自社で物流をコントロールする体制を整えています。また、中国や米国などの海外はEコマース事業の売上構成比が高いため、今後さらに物流に力を入れることは間違いないないでしょう。
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「現金が多い」のは、なぜ凄い?
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