家庭内別居中の40代夫婦が離婚したくてもできないワケ
夫婦生活。結婚式で人生を誓い合ったはずなのに、どこかで歯車が狂ってしまうこともある。
「29歳で結婚してから20年が経ちました。部屋は別々、家では妻と会っても目を合わせないし、会話もしません。食事も個別に作っているし、洗濯も自分でやっています」
こう話すのは阿部さん(仮名・49歳)だ。仮面夫婦、家庭内別居、呼び方は様々だろうが、なぜそんな夫婦生活を送り続けているのだろうか。
「妻と結婚した理由は、好きになったのはもちろんですが、正直に言うと、妻の実家が名家だったことですね。自分もステップアップしたいというか……。結婚当初から夜の営みはなかったですね。やる気は特におきないし、向こうからも求めてくることもなかったので」
結婚してからセックスレスになってしまう夫婦は多い。阿部さんは結婚10年目に子作りのためだけに奥さんを抱き、子どもを授かった。それ以降の10年に営みはない。
子どもが2歳の時から毎年夏になると、沖縄に家族旅行に行っていた。だが、3年目頃から旅行に連れて行っても奥さんが非常につまらなそうな顔をしていたという。阿部さんの転職とも重なり、「もういいや」と昨年から行くことをやめた。
「性格は最初から合わないと思っていました。裕福な家で育ったからでしょうかね、価値観や趣味が全く違うし、結婚当初、給料はぜんぶ妻に渡して小遣い制だったんです。サラリーマンからしたら1か月に一回、『ご苦労様でした』と、もらえることが非常に楽しみなわけです。それが毎月、必ず忘れる。文句を言うと『コンビニで今降ろしてくる』って。そうじゃないのですよ」
お互い一緒にいることがそんなにツラいのなら別れたらいいのに……とも思ってしまうが、そう簡単にはいかない事情があるらしい。
実は何年も前から離婚の話を切り出していたが、奥さんは首を縦に振らない。関係修復の努力をしているわけではないし、裕福な実家に子どもを連れて帰ってもいいと思うのだが、名家の娘として“恥”だと思っているのか拒否されるのだという。
阿部さんは1年前に会社を辞めて転職活動を始めることになった。前の会社を辞めた日、珍しく阿部さんは奥さんに声をかけた。今日で退職し、新しい仕事を探すことを告げた。言って欲しかったのは「ご苦労様でした」のひと言だ。しかし、奥さんは無言だった。
もしも仕事が見つかったら、今度こそ別れようとこの時に決心した。
今年になって再就職先が見つかり、結婚20周年の記念日の前に「そろそろ別の道にいかないか?」と提案した。奥さんからは「とりあえず別居したい」と返ってきた。
だが、現実問題に直面する。経済的な事情で別れられないのだ。もともと勤め人なら離婚しても生活していけるのかもしれないが、奥さんはずっと専業主婦をやってきたのだ。
現在の阿部さんの年収では、奥さんと子どもの生活すべての面倒をみることは不可能だという。奥さんが実家に戻って地元で仕事を探し、可能な限り阿部さんから養育費をもらう……それでいいような気もするのだが。
食事や洗濯は別…それでも夫婦生活を続けるワケ

なぜ離婚をしないのか?
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