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日銀人事にみる安倍内閣「最後の良心」/倉山満

8月以降、日本人が地獄に叩き落される前に、打つ手は三つある。リフレ派増員、消費減税、政変だ

 さて、この人事の意味するところは何か。当面は、日本経済の破局は防いだ。景気回復策の徹底を主張してきた原田委員の役割を安達委員が引き継ぐ。世の中にはリフレ派を苦々しく思っている人がいるので、現状維持かもしれないが、現状より後退するよりはマシだ。  このままいくと、消費増税の悪影響が顕在化するのは時間の問題で、オリンピックが終わる8月以降には地獄が訪れると想定されている。では、その前に打つ手は何か?  三つある。  一つは、日銀人事でさらなる勝利を積み重ねることである。子細に内情を見てみよう。  リフレ派が、片岡、原田(安達)委員に加え、若田部昌澄副総裁。  明らかに面従腹背の日銀プロパーが、雨宮正佳副総裁。  現状維持が、黒田総裁(財務省出身)とその他の4人。  正副総裁は財務省と日銀プロパーから一人ずつだが、その他の7人は、学識経験者と産業界の有識者から選ばれる。  今年6月30日には、布野幸利委員の任期が切れる。布野委員は前職がトヨタの重役で、産業界枠だ。普通は、産業界から後任を探す。後任の提示は今国会中の5月頃に行われる見通しだ。ここに、もう一人リフレ派を送り込むのが第一の策だ。  安達新委員は学者と思われているが、丸三証券調査部長である。「産業界枠」ではないか。ならば、布野委員の後任には「学者枠」を当てるべきだ。リフレ派には、日銀委員を引き受けても良いとする学者は、まだいる。名前をあげると迷惑をかけるので、ここでは言わないが。  それに成功すれば、現在は執行部として現状維持に賛成している若田部副総裁が、片岡委員らに乗れる。4票だ。これに黒田総裁が乗らなければ執行部割れだし、他の委員1人がついてくれば、現状以上の景気回復策を打てる。  ただし、日銀の政策には限界がある。消費増税の存在だ。当然、第二の策は、消費増税10%の撤回だ。少なくとも、5%までは減税しても良い。管理通貨制では、財政政策は金融緩和をしているときに、最も効果的だ。そして最も効果的な財政政策は、消費減税だ。  では、どうすれば可能か。それが第三の策、政変だ。  7年も政権を独占してきて何の実績もない、景気回復一つ満足にできない安倍内閣に期待するものは、何もない。我らが安達さんを推していただいてなんだが、それとこれは別だ。おそらく、安倍内閣に何かをやり遂げるエネルギーは残っていまい。  ならば、IRその他で満身創痍の安倍内閣に取って代わろうとする勢力がうごめいている。正直、安倍首相以上に期待できる人材は見当たらないが、何をすべきかを提示はしておく。  何が正論かわかっていなければ、正論が通ることは無いのだから。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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