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新型コロナで大打撃の夜の業界。小規模スナックの店内では…

風俗王が出した答えは…

 二十四時過ぎに来店した通称風俗王は、マスクの代わりに妙な青い袋を首に下げていた。それは何かと訊ねると、彼は晴れやかな顔で言った。 「ウイルスバスターです! これでウイルスを殺せるらしいんですけど、全く効かないという噂で、薬局で叩き売りされていました!」  ウイルスバスターって。お前はパソコンか。 「つまり、これを着けていると俺はバカです!って言って歩いているようなもんです! あっはっは!」  ちなみに彼が自分以外に唯一そのウイルスバスター(正式名称はたぶん空間除菌ガード)の使用者を見かけたのは、無観客レースになる直前の競馬場に居た、いかにもうだつの上がらなそうなオッサンただ一人きりだそうである。 「無観客競馬になって、場外馬券場での販売もなくなると、一気に競馬やる気がなくなりましたよ。俺、本当の競馬好きじゃないのかもしれない」  毎週末のように競馬と風俗に行っていた彼だが、先週は馬券を買わなかったようだ。となると楽しみは風俗しか残されていない。 「でもさぁ、今は風俗もちょっと行きづらい感じなんじゃないの?」  楽しみがほとんどなくなっちゃうね、とわたしが言うと、0.2秒で否定された。 「何を言ってるんですか! 数々の性病の危険を潜り抜けてきたというのに、今更コロナなんて怖がっていてもしょうがないじゃないですか! こんな時だからこそ、あえて風俗に行って好感度アップを狙う作戦ですよ!」  しょうもない作戦だ。  もろに打撃を受けている夜の業界だから、ありがたいとは思われるだろうけど好感度はたいして変わらないんじゃないかなかろうか。それにしても彼の言うことも一理ある。どれだけインフルエンザが流行っていようとマスクも着けず、特に気遣って手洗いもせず、飲み会翌日に集団感染しても三日も経てば自宅待機は暇だからと飲みに出歩いてしまうような人々が、性病に罹っても検査も受けずに平気であちこちの風俗へ行って病気を巻き散らすような人々が、新型肺炎が流行っているから自粛だとはまぁ若干騒ぎ過ぎな気がしなくもない。ひとえに治療法が確立されていないが故の恐怖なのだろうが。 「本当は今日行ってこようと思ったんですけど、昨日全力でオナニーをし過ぎてしまって精子が出そうもないので諦めました」  しょうもない話だ。
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オッサンの唾は飛び交うけれど…
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