ライフ

新型コロナで大打撃の夜の業界。小規模スナックの店内では…

イラスト/大谷雪菜

第十八夜 雨ニモ負ケズ呑ンダ暮レ

 珍しい金曜日だった。  両隣の店からもカラオケの音は聞こえてこないし、ビル全体が静まり返っているように思えた。店内では、カウンターの端に腰掛けた中島(第九夜参照)が、かれこれ三時間ぐらい一人で過去の栄光と下ネタを喋り倒していた。静かだとデカい声がいつも以上に響き渡る。口角泡飛ばさんばかりの勢いに、敏感になっているわたしはヒヤりとする。どんな時でも女体、というか性器への執着が脳内の筆頭に立っているあたり、流石ですねとしか言えない。  巷じゃ右を向いても左を向いてもコロナ、コロナで、夜の飲み屋界隈も、なんとなく早閉めしてる店が多い印象だし、ウチはウチでノーゲストということはないけれど、飲み会帰りに泥酔して集団でやってくるサラリーマンなんかはめっきり見かけなくなった。大勢での飲み会が当面中止されたためだろう。こういう時、一人で飲みに来る常連客たちのありがたさを実感する。たとえ中島であっても。  いくら企業が時差通勤でも在宅勤務でも、学校が休校でも、個人経営の飲食店なんかどうすることもできないし、開けないわけにもいかないのだ。しかし開けたといって、誰がどこから何を運んでくるかわからないこんな状況下、「気にしないで飲みにおいでよ」なんて無責任に呼び込むこともしづらい。全てはお客さんたちの判断に任せるしかないのである。飲みに来るのも自由、来ないのも自由。我々店員は最大限の注意を払って、いつも通りに営業しているしかない。  二十三時を過ぎたあたりから、ぽつぽつと一人で来店する常連客が増え始め、結局カウンターはいっぱいになった。みんなアホだな、と思いつつも、ありがとうとも思う。  不要不急の外出は避けろと言われても、換気の悪いところへ行くなと言われても、夜になれば酒を求めて街を彷徨う。「アルコール飲んで体内消毒だ~!」なんて馬鹿なことを言いつつも、みんなホントはそんなの意味ないってわかってる。それでも飲むのをやめられない。酒飲みというのは業の深い生き物だ。
次のページ 
風俗王が出した答えは…
1
2
3
Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事