更新日:2023年05月24日 15:30
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無観客競馬予想で重視すべき競馬新聞「調教欄」を読み解く4つのポイント

内と外のコースロスの差

 トラックコースでは、実際の競馬場と同じように内を通るか外を通るかでタイムの出方が変わってくる。美浦で言えば南ウッドコース、栗東で言えばCウッドコースが代表的な調教コースだ。結論から言えば、内を通った馬のタイムは割り引いて考え、外を通っていた馬のタイムは信用できる、という話だ。ではどれくらいその差があるのか紹介しよう。  競馬新聞上では通った場所を1~9の数字で表している。最内なら1、大外なら9といった具合だ。この通った場所を「分どころ」という。栗東のCウッドコースの1周距離は、最内(1分どころ)=1800m、中央(5分どころ)=1857m、大外(9分どころ)=1913mとなっている。最内か大外かで実に113mもの距離差が生じるのだ。ここからは数学的な計算なので、読み飛ばしていただいてもいいのだが、秒差で言うと、最内を通るか大外を通るかで、調教タイムは3~4秒ほど変わってくる。  では最内と大外で生じる秒差を計算していってみよう。距離の差はコーナーでつくので、カーブを1度回るごとに、113m÷2=56.5mの差が出る。以下の計算では、便宜上、その差は56mと仮定する。  大外の9分どころは5Fを走った場合の実質距離は、1000m+56m=1056m。仮にこの距離を68.0秒で走ると、1mあたり約0.0644秒で走っていることになる。ここから逆算すれば、最内の1分どころ(1000m)を走った場合は、0.644秒×1000m=64.4秒で走れるということになる。つまり1分どころと9分どころとでは、3.6秒もの差が生じることになるのだ。  分どころは1~9分まであるので、この差の3.6秒を(9-1で)8つの分どころで割ると、3.6秒÷8=0.45秒。つまり分どころ1つにつき、0.45秒を足し引きすることによって、相対的にタイムを比較することが可能になるのだ。  つまり最内(1分どころ)を通った馬の64.4秒と、中央(5分どころ)を66.2秒で走った馬と大外(9分どころ)を68.0秒で走った馬の調教タイムの価値は同じだということだ。調教タイムを見るときは、コースのどの部分を通って出したタイムなのか、というところにも注目していただきたい。

騎乗者でも時計は変わる

 ハンデ戦などでは「斤量が1キロ違うと1馬身違う」と表現されるが、それは調教も同じ。助手の体重まではわからないが、ジョッキーの体型ならファンの方でも想像しやすいはず。まだ減量制度のある若手騎手や、先日GⅠ制覇を飾った松若風馬騎手などは小柄なため、調教でも速いタイムが出やすい。また競馬学校に通っている生徒が騎乗していることもあり、それらは「見習い」として調教欄に掲載されている。40キロ半ばと他の騎乗者よりも極端に軽いため、かなり速いタイムが出るが、それは馬の能力でなく斤量の差によるところが大きいので、少々疑ってかかる必要がある。  ざっと4つのポイントに分けて紹介したが、もっと突き詰めて言えば、調教の時間帯、馬場状態、厩舎の傾向、併せ馬の内容などなど奥が深いのが「調教予想」の面白いところだ。ただこれらは自分自身が毎日トレセンで調教を見てきたらこそ感じられたことで、労力と成果のバランスを考えれば上記のポイントを押さえるだけでも十分だ。調教欄は数字が多く並び目がくらみそうになるが、注意するポイントだけしっかりおさえれば、勝ち馬が輝いて見えてくるだろう(たぶん笑)。
元「競馬エイト」トラックマン(栗東担当)。学生時代には中央、地方を全場渡り歩き、フランス、香港、ドバイまで駆け回っていた、根っからの現地観戦好き。『競馬伝道師』として週刊大衆やモンドTV「競馬バトルロイヤル」などでも活躍している。
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