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アマゾンのベゾスが「顧客第一」を経営理念にしたワケ

人物の影響がどう響くかは受け手次第

 人物の影響は抽象的です。誰かの体験を聞いて、「顧客第一が大切だ」と感じても、どんな行動が顧客第一なのか、具体的に思い浮かぶ内容は人によって異なります。この経緯について、ハワースは「ベゾスに顧客の車を洗った経験はないと思いますよ」と皮肉っています。しかし、もしベゾスがアマゾンという通販サイトに関して、一人一人に親身になる事が顧客第一だと考えていたら、カスタマーサービスに電話番号がない今のアマゾンはなかったでしょう。  ベゾスはコンピュータ及びインターネット業界で大成功を納めた人物ですが、アップルのスティーブ・ジョブズや、グーグルのラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリンなどとは少し異なっています。ジョブズは「美しい書体を持ったコンピュータ」に、グーグルの二人は「すべての情報に索引をつけること」に、つまり事業そのものに情熱を感じていました。  それに対して、ベゾスは「インターネットは途轍もないスピードで拡大していくだろう」という成長性を見込んで参入しています。しかし、だからといって彼が「儲かりそうな業界だから」という、よくある理由だけで始めていたら、今のような成功はなかったでしょう。  そして、その時に見つけたのが、書店開業セミナーで出会った「顧客第一」という経営理念だったのです。このように人物の影響というのは、いつどこで自分に起きるかわかりません。だからこそ、多くの経営者は成功の理由について、「自分は運がよかった」と話しています。  しかし、その運命には「人物の影響」という正体があります。誰かの発言や行動に接していると、自分の心を揺さぶられるものと出会います。その心を揺さぶられたものこそ、その人がやるべき仕事です。仕事やビジネスというとつい理屈で考えがちですが、「顧客第一」は理屈で納得する理解するものではありません。誰かの体験に共感して、「自分もそうしよう」と心情で理解するものです。  単に頭で考えるだけでなく、目と耳を開いて、足を運び、感動すること。もしくは、これまでに感動した体験を思い出すこと。このどちらかがきっかけになって、個人における信念や、企業における理念は見つかります。  ベゾスの体験は平たく言えば、「ビジネスセミナーで感動した」という話に他なりません。もしビジネスセミナーに行って感動した経験があれば、ベゾスの体験について「そういえば自分にも似たようなことがあった」とその時の心情がよみがえり、それが行動の原動力になります。今回の話は『ワンクリック-ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛-』(日経BP社)に詳しく書かれています。気になった方はぜひ読んでみてください。 佐々木
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)が発売中

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