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ユニクロのセルフレジは企業理念に基づいてるからすごい

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第193回
洋服屋

※写真はイメージです

 ユニクロは2017年に、ID情報を埋め込んだタグを電波などで読み込むことで情報をやりとりするRFIDを利用したセルフレジを全世界2000店舗で導入すると発表しました。それから3年経った現在、大型店舗や新店舗はセルフレジがほぼ導入されています。  これまでの一般的なセルフレジは、商品バーコードを一つずつ自分でスキャンする必要がありました。そのためちょっとした買い物ならば問題ありませんが、買い物量が多くなると普通のレジに並ぶという使い分けがされています。  それに対してRFIDを利用したユニクロのセルフレジは、商品を入れたカゴを台に乗せるだけで電波で商品情報を読み取り、ほぼ一瞬で精算が終わります。実際に利用したことのある方は、その便利さに驚いたのではないでしょうか。  なぜユニクロはこのRFIDを導入したのか。RFIDは売り場の会計だけでなく、倉庫管理にも大きな力を発揮します。そのため世界的な企業であるユニクロが導入するのは当然とも言えますが、もう一つ理由があります。それがユニクロのモットーである「ヘルプ・ユアセルフ」です。  ヘルプ・ユアセルフは和訳すると「ご自由にどうぞ」です。ユニクロは求められない限り接客をしません。これはユニクロの第1号店である『ユニーク・クロージング・ウェアハウス』を開店した時からのモットーです。第1号店がオープンしたのは今から30年以上前になる1984年のこと。来店者に声かけする接客が、アパレル業界の常識だった時代です。  なぜユニクロの創立者である柳井正は、この「セルフヘルプ」をユニクロのモットーにする決断をしたのか。決断には必ず人物の影響があります。「あの時、あの人が、ああ言ったから。だから自分はこうする」ということがあって、人は何かを決断します。柳井の「セルフヘルプ」の決断には、アメリカの大学生協の影響があります。  ユニクロをオープンする前の柳井は『ギャップ』や『リミテッド』などアメリカの先進的な小売チェーンの視察旅行に出かけたり、同じくアメリカでTシャツやジーンズを買いつけたりしていました。この時に立ち寄ったのが、アメリカの大学生協でした。彼の著書『一勝九敗』(新潮社)では、その時のことが次のように記されています。 「学生がすぐにでも欲しいものを手に入れられるような品揃え、それでいて接客が要らない。セルフサービスだ。売らんかなという商業的な匂いがしないし、買う側の立場で店作りされている。本屋やレコード店と同じようにすーっと入れて、欲しいものが見つからないときは気楽に出ていける。こんな形でカジュアルウェアの販売をやったらおもしろいのではないかと思った」
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理念の延長線上にサービスがある
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