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杉良太郎、コロナ禍と時代劇を語る「日本のよき伝統は消えてしまったのかもしれない」

杉良太郎 スペシャルインタビュー_02_(C)時代劇専門チャンネル

(C)時代劇専門チャンネル

殺陣に合気道を取り入れた

 ことし芸能活動56周年をむかえる歌手・俳優の杉良太郎さん。9月に時代劇専門チャンネルで「~魂の男~杉良太郎祭り」が特集されることになり、インタビューが行われた。  杉さんは「文五捕物絵図」「遠山の金さん」など、これまでに1400本以上の時代劇で主演。もっとも忙しいときには、東京と京都を往復し、週に4本の撮影をこなしていたとか。しかも脚本や企画のアイデア出しから、殺陣も杉さんが行っていたという。まずは、「杉良太郎祭り」で放映される「新五捕物帳」の見どころを聞いてみた。 杉:「新五捕物帳」は、いままでの捕物帳にない立ち回りを入れました。それが合気道です。新五が使う大東流合気柔術は当時からあった流派で、そこに十手術を少し、捕縛術も少し入れて。素手で戦うんですよ。撮影では実際に合気道の指導員に入ってもらって、本気で投げていました。まるで雑巾を投げるみたいに思い切り投げる。  実は、映像をよく見てもらうとわかるのですが、投げるときに重そうにしていると思います。普通の立ち回りでは、からみの相手がタイミングを合わせて跳んで投げ飛ばされてくれるので軽くてきれいに見えるのですが、合気道の指導員相手だと、そうはいかないので。本気でリアルな殺陣もお届けできていたと思います。
新五捕物帳【セレクション放送】_01_(C)ユニオン映画

(C)ユニオン映画

 実は、杉さん自身が合気道五段の持ち主。壮絶ともいうべき大迫力の立ち回りシーンは、こうして生まれていたのだ。しかしいまや、地上波での時代劇シリーズ新作の放映はほとんどなくなり、「お白洲」や「桜吹雪」を知らない子どもたちがほとんどだ。こうした状況をどのように受け止めているだろうか。 杉:いまの人に時代劇を身体にしみこませるのは難しいですね。私達が子どものころはチャンバラ遊びをしていた時代ですが、いまの人は、そんな遊びもしませんし、時代劇を見る機会も少ない。時代劇が身近ではなくなってきているから、自然と所作が出てくるまでになるのにはなかなか。昔に比べると撮る人も作る人も減ってきています。  この新型コロナウイルスの影響で舞台や撮影現場がなくなり、女の人の髪を結う結髪さん、男の人の髪を結ったり、鬘(かつら)を整えたりする職人・床山さんほか、小道具の人も技術さんも、どんどん辞めてしまっています。現場がないと生活が出来ないので、辞めて他の仕事をせざるを得ない。「終息したら、また舞台もテレビも始めましょう」と言っていますが、そのときはもう一緒に作品を作っていくスタッフがいないと思います。コロナの打撃は今も大きいですが、収まった時にもっと大きな打撃が来るでしょうね。  教えて教えられるもんじゃないんですよね、時代劇って。体の中を流れる血のようなものだから。私達は簡単に、一歩足をひいて腰をひねって抜刀することができますが、いまの人にやれっていってもなかなかすぐにはやれないですから。期待できるのは、大衆演劇。大衆演劇が頑張ってくれないと終わっちゃうかもしれない。日本のよき伝統みたいなものは、消えてしまう……もう消えてしまったのかもしれない。  時代劇や演歌が全盛のころというのは、日本の犯罪傾向が違ったと思います。勧善懲悪というか、悪いことは悪い、いいことはいい、という時代。いまはちょっとわかりにくいですね、犯罪を犯す理由も。そういう意味では時代劇に復活してほしいと思います。時代劇をずっと見ていると、教育されますから。こういうのが悪い奴だ、こんな悪いことはしちゃいけないんだな、と。わかりやすい、伝わりやすいのが時代劇のいいところです。
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杉良太郎が語るコロナ禍
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■時代劇専門チャンネル「~魂の男~杉良太郎祭り」9月21日スタート。「新五捕物帳」、「大江戸桜吹雪 八千両の舞」などの時代劇のほかに、昨年3月に国立劇場で開催したデビュー55周年記念コンサートや特別インタビューも放送される。
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