4~6月期のGDP速報値は年率換算で戦後最悪の前期比マイナス27.8%を記録(
内閣府発表)。もはや誰しも“失職”は他人事ではない。働き盛りの10人に1人が失業者になるような戦慄の未来が本当にやってくるのだろうか……。
コロナ禍で総下流化が進行中!
コロナ関連の解雇や雇い止めの数は5万人を突破し、1か月1万人のペースで今も増え続けている(厚生労働省調べ、8月末の時点)。その波は非正規労働者だけでなく、正社員にも押し寄せる。東京商工リサーチによれば、早期退職を募集した上場企業は52社に達し、対象人数は9323人に上るという。
「このままいけば、失業率10%到達も不思議ではない」
こう衝撃的な見解を示す有識者も少なくない。現在2%台の失業率にとどまる日本において、数字を押し上げるのは間違いなく、正社員の解雇だ。
「コロナ発生当初、感染拡大の影響を『夏まで』と予測していた各企業は雇用調整金やコロナ融資、非正規労働者の雇い止めで持ちこたえていました。でも経済活動が元に戻らない以上、それも限界。秋から年末にかけ、正社員の整理に手をつけ始める企業、倒産する企業が続出する可能性が高い」(経営コンサルタント・中沢光昭氏)
混乱する労働市場の影響は、すでに転職採用の現場で起きている。ある企業の人事担当者は「今まで売り手市場で採用に苦戦していたのが嘘のよう。3職種3人の枠に対して、120人の応募が。よくないことだが、年齢や学歴でフィルターをかけるしかない」と話す。
さらに採用抑制の影響を最も受けるのが、新卒採用の現場だ。すでに来年度の新卒採用者を断念する企業も相次ぐなか、人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「第二の就職氷河期が到来し、若者の失業率が大幅に上昇する」と分析する。
「今後34歳以下の若者の失業率は15%近くにまで増加。就職できなかった若者は親に寄生するか、フリーターや非正規の仕事を続けるしかありません。若者の高失業率が慢性化し、全体の失業率を押し上げることが推測されます」
溝上憲文氏
総務省統計局によれば、6月時点の失業率は2.8%(前年同月比+0.5ポイント)と微増だが、すでに増加局面に入ったと見ることもできる。それは“失業者予備軍”とされる人たちの増加だ。
「完全失業率にはカウントされない休業者数が4月に前年同月比で420万人増え、過去最大の597万人を記録。6月になっても236万人と高水準です。彼らがこのまま復職できず失職者になれば、失業率はおのずと高くなります」(労働経済ジャーナリスト・小林美希氏)
小林美希氏
現在の労働力人口は6865万人。失業率10%となれば、さらに492万人もの労働者が働き先を失う計算になる。これだけの失業者が街に溢れ返る、経験したことのない世界が目前まで迫っている。
「失業したら最後、上がり目がなく、一生を低賃金で過ごすことになります。日本は国としても停滞していく一方の後進途上国になり果てるでしょう」(中沢氏)
失業率10%が現実味を帯びてきた日本に、希望の光が差し込む日は来るのだろうか。
【中沢光昭氏】
経営コンサルタント。経営コンサルとして活動する傍ら、経営者として破綻企業などの再建を行う。著書に『
好景気だからあなたはクビになる!』(扶桑社新書)
【溝上憲文氏】
人事ジャーナリスト。月刊誌、週刊誌記者を経て独立。経営、ビジネス、人事、雇用、年金問題などを中心に執筆活動を展開。著書に『
人事評価の裏ルール』(プレジデント社)
【小林美希氏】
労働経済ジャーナリスト。『週刊エコノミスト』編集部を経て’07年よりジャーナリストに。著書に『
ルポ 中年フリーター「働けない働き盛り」の貧困』(NHK出版)
<取材・文/週刊SPA!編集部>