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介護業界、失業率悪化で人手不足は解消も…「深刻なトラブルが増える恐れ」

 4~6月期のGDP改定値は戦後最悪の前期比年率マイナス28.1%を記録(9月8日、内閣府発表)。もはや誰しも“失職”は他人事ではない。このまま失業率が10%まで悪化したら、溢れた失業者たちが流れる先に、深刻な人材不足に悩まされている介護業界も考えられる。それによって生じるメリットとデメリットをジャーナリストの太田差惠子氏に聞いた。

失業率が10%になったら…介護業界の人材不足は解消されるものの“質”の低下で老人虐待が横行する

[失業率10%]の恐怖

有料老人ホームの月額利用料の相場は15万~40万円。毎月これだけの額を負担できるのは限られた層のみになるかもしれない(写真はイメージです)

 長年、深刻な人材不足に悩まされてきた介護業界。他業種で失業した人々が職を求めて参入してくることが予測されるが、20年以上にわたり介護業界を取材するジャーナリストの太田差惠子氏はある懸念を示す。 「失業率が高まれば雇用の移動が起き、一時的に介護業界の人材不足も解消されていくかもしれません。しかし、介護は見ず知らずの他人をつきっきりでお世話しなければならない仕事なので、スキルはもちろん性格的な向き不向きが出てしまう。肉体的にも精神的にも決して楽な仕事ではないので続かないか、ストレスを利用者にぶつけて虐待などのトラブルが増える恐れがあります」
[失業率10%]の恐怖

太田差惠子氏

介護施設に広がる格差

 自分の親がぶん殴られたという知らせは受けたくないものだが……。一方、介護施設にも厳然たる格差が広がっていく。 「ごく一部の富裕層は高額な入所料を払って高級老人ホームに入所するでしょう。しかし失業率の悪化、賃金の低下によって中流層が消滅することで、淘汰の危機に晒される施設が増えます。現時点ですでに経営が苦しくなり、倒産を余儀なくされた施設も出ています」
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延々と待機せざるを得ない事態も
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