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菅義偉首相が誕生し、アベノシンジャーズは彷徨う亡者と化した/倉山満

対する麻生派は…

 対する麻生派は、麻生財務大臣が留任、主流派の証である党四役(国対委員長を入れると五役)を確保。閣僚数も2で、うち一つは政権の目玉の規制改革。面目は保った。なお、河野太郎大臣は、ここで成果を残すことが将来の首相への跳躍台となる。  両者対立のドサクサで最も浮上したのが、竹下派だ。政権の要の官房長官の他に、主要閣僚の外務。さらに選挙前の選対委員長。3人とも安倍前首相に近いと言われる。  だが、本欄で再三指摘してきたが、この派閥は引退して久しい青木幹雄氏の影響力が強い。茂木敏充外相と加藤勝信官房長官は竹下派の後継争いを繰り広げているが、青木氏の眼鏡にかなった加藤氏が優位に立ったと言われるようになった。  割を食ったのが、細田派だ。党四役の政調会長こそ押さえたが、選挙対策委員長を手放してである。大臣の数こそ5と多いが、主要閣僚は一つも得ていない。萩生田光一文相を官房長官に押し込もうとしたが、失敗したとか。最大派閥の強みを生かせなかった。

今は発足当初で支持率は高いが、御祝儀だ。早期解散ができねば、何が起きるかわかるまい

 ところで菅首相は、「無派閥」としか報道されないのに「菅派」とは奇異だろう。実態は25名の小派閥とか。ここでは菅首相と近い3人を「菅派」と称した。官房長官を自派で得られなかったのは、痛い。  総評すると、弱体内閣である。小派閥を率いた首相は、大派閥に翻弄される運命にある。では、突破口はどこか。  衆議院の早期解散である。早期解散論の筆頭は麻生財務大臣だ。自らの内閣で早期解散できず、政権喪失の大敗に至った。その教訓から進言している。  これに反発しているのが、公明党だ。創価学会は公明党だけでなく、自民党の最大支持組織でもある。 「コロナが収束するまで解散はできない」と釘を刺す。公明党は二階幹事長と関係が深い。ただ、当の二階氏は組閣前には公明党に同調していたが、今は「総理の判断されること」と下駄を預けた。下村博文政調会長が「今すぐやるべきだ」と発言すれば山口泰明選対委員長が「やりたいからやるという問題ではない」と打ち消す。  結果、臨時国会召集は10月下旬で調整している。菅首相自身も、早期解散には前向きではないようだ。
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政界の一寸先は闇
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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