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菅外交は、アメリカの「お友達」を選ぶのか、「仲間」を目指すのか/倉山満

首輪のついた「弱い日本」から「自立した強い日本」への道は、軍事力を裏付ける経済力の回復だ

 さて、こうした流れの中で安倍外交はなにをやってきたか。孤立するトランプの友達でいた。ただ、それだけだ。この場合の「友達」とは「仲良し」であって「仲間」ではない。「仲間」とは何か。いざという時に、一緒に武器を持って戦う存在のことである。たとえば、イギリスはアメリカの政権が共和党だろうが民主党だろうが、アメリカの戦いには兵を派遣して戦ってきた。もちろん、時に独自の判断でアメリカについていかない時もあるが、「原則として一緒に戦う仲間」である。  翻って安倍外交はどうだったか。トランプは、日本に対等の同盟国にならないかと持ち掛けてきた。その為に自主防衛を容認する発言をした。ところが安倍首相は早々に拒否した。軍事抜きの外交を選んだ。確かに孤立するトランプは日本を無下にすることはなかった。では、それが日本の国益となっただろうか。安倍政権は単に、日本がマトモな軍事力を付けることを嫌がる勢力と戦うのを回避しただけではないか。  では、日本がマトモな軍事力を付けることを嫌がる勢力とは誰か。国内においては財務省である。財務省は財布の紐を締めるのが仕事である。国家予算つまり国の支出は、大半が福祉と地方へのバラマキに消えている。そのバラマキを支える為に増税と緊縮財政に走っている。そんな中で、防衛費は額が大きくて抵抗力が小さい。福祉や土木を削ろうものなら族議員から業界団体までが束になって抵抗してくるが、防衛に関心を持つ国民や政治家は少ない。財務省からしたら、「防衛費を削れなければ、何を削るか」なのである。  今までの歴代アメリカ大統領は、強い日本を本質的に忌避し、首輪をつけた状態に置いておいた。では、それが今後のアメリカの国益になるのか。バイデンが「弱い日本」を首輪につないでおきたいのか、それとも「自立した強い日本」を望むのか。我が国は、後者こそが日本だけでなくアメリカの国益になるのだと説得すべきであろう。  そして強い日本となるには裏付けが必要だ。安倍内閣のGDP0.95%の防衛費では合格最低点に達していない。平時で2%が標準である。本気で中国を潰すなどと考えるなら、7%も視野に入れねばなるまい。ただ、精神論だけ言っても裏付けが無ければ意味がない。では、その防衛費を増額させる財源はどこからひねり出すか。  経済成長以外にありえない。安倍内閣は8年も政権を独占しながら、景気回復すら達成できなかった。それどころか2度の消費増税により景気回復を腰折れさせていたところに、コロナ禍である。今でこそ巨額の給付により国民経済は何とか支えられているが、ではいつまでこれを続けるか。それとて、今すぐ金融緩和をやめてしまえば、リーマンショック以上の大不況が押し寄せてくるのだ。

米中対立の中で、我が国の選択肢は二つしかない

 コロナ禍を収拾、そして景気回復を成し遂げねば、外交などできはしないのだ。古い格言に「外交と軍事は車の両輪」とある。軍事抜きの外交など、発言力は十分の一だ。  もし菅内閣が本気で外交をやるならば、防衛費GDP2%程度の軍事力を持たねば話にならないし、その為にはコロナ禍とデフレ経済を早々に退治しなければ、軍事力の裏付けとなる経済力が回復しない。  米中対立の中で、我が国の選択肢は二つしかない。一つは翻弄されるだけの存在。もう一つは自分の力で生きる国となること。  さて、菅義偉首相の選択はどちら?
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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