更新日:2020年12月19日 13:40
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殺人やクスリ…犯罪者が集結するダークウェブの深い闇

ダークウェブ事件簿

ダークウェブ

写真はイメージです

▼美人モデル人身売買未遂事件 ’17年8月、共犯者とともに20代の英国人女性モデルを拉致し、ダークウェブのオークションサイトで売りに出そうとした男がイタリア警察に逮捕された。男はミラノの英国領事館で彼女を解放したのちに身柄を拘束された。取り調べではサイバー犯罪集団「ブラック・デス」に雇われて犯行に及んだと供述。 ▼コインチェックNEM流出事件 ’18年2月、仮想通貨取引所のコインチェックがハッキングされ、NEM580億円分が不正に引き出された。その後、不正引き出しされたものとみられるNEMを時価の15%引きで販売すると謳う不審なサイトがダークウェブ上に出現。このサイトは保有するNEMを完売したが、犯人はいまだに捕まっていない。 ▼イスラム系テロ組織支援サイト ’18年2月、イスラム原理主義を標榜するシリアのテロ組織を支援するサイトがダークウェブ上に出現。同組織が戦闘に使用する兵器や弾薬の購入資金を仮想通貨で受け付けており、テロ組織の改たな資金獲得手段として当局は警戒を強めている。支援者は募金の使途を選ぶことができるようになっていた。 ▼世界最大級の児ポサイト摘発 ’19年10月までに、乳児や幼児が性的暴行される動画を配信するダークウェブ上の児童ポルノサイトの運営者の男と投稿者300人以上が韓国で逮捕された。同サイトは有料会員4000人以上から数千万円の仮想通貨を受け取り、その代価として児童わいせつ物20万件余りを提供していた。 ▼n番部屋事件 ’18年から’20年にかけ、主に韓国国内で女性を脅迫して撮影した性的で残虐な動画がテレグラム上で有料配信されていた。被害者は少なくとも74人に上り、このうち16人は未成年だった。有料会員数は1万人に達していたとも推測される。11月26日、主犯格の男には一審で懲役40年が宣告された。

ロシアのハッカーが請け負った2000ドルの仕事とは?

 ここで頻出する匿名ブラウザとは、Tor(トーア)と呼ばれるものだ。一般的なブラウザでは訪問先のウェブサイトに閲覧者のIPアドレスなどが残るが、Torを使用したブラウジングでは、そうした痕跡が残らないとされている。その上、一般的なブラウザではアクセスできないコンテンツにもアクセス可能なことから、Torは「ダークウェブの入り口」とも呼ばれている。  関西を拠点とする半グレ集団に属するK氏も、Torを悪用する一人。実態についてこう明かす。 「日本だと一番の目的はクスリの売買でしょうね。ダークウェブ上には掲示板が無数に存在するのですが、プッシャーの書き込みがいくらでもある。要は秘匿性の高い5ちゃんねるみたいなもので、オレオレ詐欺をやっている連中は出し子の調達にダークウェブに書き込みしている闇派遣業者を使ったりするし、架空口座の買い付けにも使っています。  逆に、スキルを持ってる個人が『不正ソフトを使って企業を攻撃します』とか売り込んでいるケースもある。俺が実際に見たのはロシアのハッカーが2000ドルで企業のサイトを1週間ダウンさせるって内容でしたが、本当にできたので驚いた」
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記者がダークウェブ上の掲示板で目にしたものとは
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1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~

詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた

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