更新日:2020年12月19日 13:40
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殺人やクスリ…犯罪者が集結するダークウェブの深い闇

ダークウェブと治安当局との戦い

ダークウェブ

ダークウェブで検索される用語を視覚化したのが上の写真。仮想通貨、アノニマス、ポルノなどが目立つ

 各国捜査当局は匿名のネットの海で、どのような捜査で犯人らを追い詰めているのか。前出のインターポールに勤務、現状に詳しい福森氏が明かす。 「Torは、世界中の支持者によって提供される無数のサーバーのうち、ランダムに選ばれた3つを経由することで、匿名性を確保しています。  しかし、これらの中にFBIが設置したサーバーもあったりする。犯罪組織がアクセスしたときに偶然3つともFBIのサーバーだったら通信内容を入手できる、という研究もある。ダークウェブ上でハッカーを募集している犯罪組織もあり、捜査官が応募して潜入することもある」  前述のとおり、Torよりも難しいといわれるテレグラムを利用した犯罪行為については、どんな対応方法があるのか? 「目下議論されているところですが、スマートフォンやパソコンなどの通信端末にバックドアを作り、テロのような緊急性の高い事態が差し迫った時のみ、各国の治安当局がアクセスできるようにすべきという主張もある。民主主義国家では実現は相当困難とは思われますが……」

焦点は国家間協力

 今後、国を跨いだ犯罪の横行は想像に難くない。日本の警察が取るべき道とは? 「サイバー犯罪捜査に関しては、予算的にもインフラ的にも日本の警察は恵まれています。喫緊の課題は国際連携でしょう。ダークウェブ関連の犯罪は各国との連携が必須ですが、ギブ・アンド・テイクでなければならない。他国の捜査機関に協力を要請するばかりではなく、他国からの要請にも応えなければダメ。  海外ではダークウェブを隠れ蓑とする犯罪組織に対して裁判所の許可のもと、合法的にハッキングすることも捜査手段として用いますが、日本の警察には難しい。法律の整備なども含め体制づくりが必要です」 【Cheena氏】 ’97年、関東生まれ。ホワイトハッカーとして漫画村事件で警察に協力。コインチェックのNEM流出事件でも実態解明に貢献。著書に『ダークウェブの教科書』(データハウス) 【福森大喜氏】 筑波大学卒。’14年、所属するサイバーディフェンス研究所からインターポールに出向し、サイバー犯罪捜査や捜査官の育成に従事。監修書籍に『サイバー・クライム』(講談社) <取材・文/奥窪優木>
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた
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