更新日:2020年12月19日 13:40
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殺人やクスリ…犯罪者が集結するダークウェブの深い闇

記者がダークウェブ上の掲示板で目にしたものとは

ダークウェブ

傷害や殺人を請け負うとする業者も。「ほとんどが手付金を振り込ませて実行しません。古典的な詐欺です」(半グレ)とは言うが……

 無法状態ともいえるダークウェブを覗くため、筆者も自前のPCにTorをインストールしてみた。  まず訪れてみたのは、ウィキペディアにURLが掲載されている「onionちゃんねる」という掲示板だ。一般ブラウザではURLを打ち込んでもたどり着くことができない。しかしTorを使うと遅めの通信速度ながら、サイトが開いた。掲示板内を数分巡回してみただけで圧倒された。 「薬、武器、基本どんなものでも用意します」「殺人、復讐代行、拉致等承ります」など、物騒な投稿が複数見られるのだ。中には個人の名前と住所を晒したうえで「室内に大金を所持」していることを示唆するなど、まるで空き巣や強盗をするよう煽る書き込みもあるではないか。  性犯罪系の掲示板も活況だ。 「児ポ売ります」「ロリ画像ください」などという文言が堂々と並び、画像へのリンクを張っているスレッドも少なくなかった。

犯罪の温床となりつつある「テレグラム」

 そして、こうした書き込みに高い頻度で添えられているのが、メッセージアプリ「テレグラム」のIDだった。そこで投稿者と閲覧者は2者間のやりとりに移行し、取引を行うということなのだろう。『ダークウェブの教科書』の著者でホワイトハッカーのCheena氏が解説する。 「これまでダークウェブでなされていた犯罪性の高い情報交換が今、テレグラムに移行しつつあります。テレグラムは’17年にロシア当局からの通信記録開示の要求を拒否。この一件でダークウェブに代わる秘匿性メディアとして注目されたことも一因でしょう。  そもそも、ダークウェブのコンテンツは英語がメインで、Torは通信速度が遅い。その点、テレグラムはスマホで簡単にやりとりできて通信速度も速く、利便性を求めるユーザーに支持されています。掲示板に相当するチャンネルの開設も容易で日本語のコンテンツも増えている」  ネットを使った犯罪組織の摘発を描いた『サイバー・クライム』の監訳者・福森大喜氏は現在、インターポール(国際刑事警察機構)でサイバー犯罪と向き合う専門家である。そんな福森氏も、昨今の変化を危惧する。 「テレグラムのように、サーバーにデータが存在しないことを前提としているアプリ上での個別のやりとりとなると、捜査機関にとってはTorよりも手が出しづらい。犯罪のあり方がめまぐるしく変わっており、今後、凶悪化が懸念されます」  最近よく耳にするアポ電強盗なども、共犯者とのやりとりにテレグラムが使用されている現実がある。無限に拡大するサイバー空間に対応した治安体制の確立が急がれる。
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焦点は国家間協力。ダークウェブと治安当局との戦い
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1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~

詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた

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