平原選手からの電話に動揺
――共同記者会見で昨日平原選手から電話があって決まったとのことですが、いつ電話が来たのでしょうか?
脇本 今は伊豆のナショナルチーム施設で練習しているのですが、ちょうど練習が終わり、片付けて車に乗ろうとしたタイミングでかかってきました。
――やっぱり、驚きましたか?
脇本 驚くというより動揺しましたよ(笑) でも、翌日に記者会見を控えたこのタイミングで平原選手から直で電話がかかってくるということは、何の件かは想像できましたね。
――平原選手から「後ろに付きたい」と。
脇本 ほんと丁寧な感じでお話いただいて。年上の名選手ですから緊張しましたけど嬉しかったですね。ラインができたほうが圧倒的にやりやすい。単騎のつもりでしたから、自力で頑張るといっても単騎だとやりづらいなあとは思ってましたから仕掛けやすくなりましたよ。逃げたほうがチャンスあると思ってましたから。
――中国勢は松浦選手が前でしたけれど、これは想定内?
脇本 僕は今年の状態なら松浦選手が前だと思ってました。
――それならば、中国勢にいい先制パンチを与える形になりましたね。今年は優勝できそうですか。
脇本 中国勢が想定外だと思ってくれるならいいですね(笑) 今年はオリンピックが延期になったもどかしさ、悔しさがあります。それを全部グランプリにぶつけます!
「そろそろ練習終わる頃だと思って……」脇本を気遣った平原の電話
脇本雄太選手の番手を宣言した平原康多選手。11度目の挑戦で悲願のグランプリ制覇はなるのだろうか……
写真/(公財)JKA提供
一方、脇本選手に連携をお願いした側となった平原選手。過去10回のグランプリ出場で2着が最高、昨年は3着。そんな平原選手が夢の連携を決めた経緯は……
――先ほど脇本選手にインタビューしたのですが、お電話のタイミングがちょうどナショナルチームの練習後だったとの話を伺いました。地区の違う脇本選手との連携で今回はこれまでと違う思いなのでしょうか。
平原 はい、ちょうど練習が終わる頃だろうなという時間を見てお電話しました。ずっとギリギリまで悩んでましたし、相談もしましたが最終的に自分で脇本選手ならいいだろうと決めました。10回も走っているなかで競走形態も変化しているので、思いは毎年違うのですが、他地区の自力につけるという意味ではこれまでとはまるで違ったグランプリだと思います。
――SNSでは「平原選手はこれまで関東のラインの前で頑張り続けていたし、今年は脇本選手の後ろが空いてるならついてくれないかな」と期待する声も多く聞かれました。
平原 ネットでそういう声があるのは見てましたよ。ええ、見てます。それも連携を決めた要因の一つにはなってますね。
――ファンの声が届いたわけですね。ファンにとってはたまらないと思います。最後にグランプリを観戦する方々に向けてお伝えしたいことはありますか?
平原 1回見て下さい! 見るだけの価値はあります!
最後の一言「見て下さい」のシンプルなメッセージ。シンプルゆえに力強い決意を記者は感じた。
「脇本-平原が並ぶと思ってなかった」松浦悠士の策は
ラインを組む清水裕友選手と松浦悠士選手。「清水ー松浦」の並びと思われたが、松浦選手が前を走ると宣言。会見場にどよめきが起きた
写真/(公財)JKA提供
最強の脇本を今年G1決勝で一度倒しているのが松浦悠士選手だ。「打倒脇本に3つの作戦を考えている」を実践し、結果を残したわけだが、今年最後の大舞台ではどんな「策」を見せてくれるのか。玄人競輪ファンが惚れる正統派競輪選手はインタビューでも丁寧な言葉選びで答えてくれた。
――ファンが注目した中国勢の前後は「松浦-清水」となりましたが、いつごろ決まったのでしょうか?
松浦 (共同記者会見5日前)の17日ですね。ですけど、実は2.3日前に清水選手からやっぱり考え直そうかと相談がありました。自分は前でいいと思っていたのすが、結局当初決めたとおり前で戦います。ですけど、脇本さんが単騎だと想定していたので、作戦はこれから考え直しです。
――清水選手との連携で前になるときに意識していることは何でしょうか。
松浦 理想は仕掛けどころを逃さず、ラインで決まるようゴールまで踏み切れるように、という気持ちです。
――松浦選手は今年、策を講じて脇本選手に勝っています。グランプリに向けてもなにかやってくれると期待しているファンは多いと思います。
松浦 全部ラインになるというのは展開を読む点ではわかりやすくなるので、作戦はこれから考えますけど、考えやすくはなったと思ってます。ファンに喜んでもらえるのは嬉しいことで、ファンが見ていて選手と合っている感じ、緊張感ある戦いのなかで僕が考えた動きとファンが望む動きが一致できたらうれしい。100円でも買ってほしいですね。僕も賞金を目指して走ってますし同じ気持ちになれると思います。もちろん、見てもらうだけでも十分に同じ気持ちを味わえると思うので、ぜひ見てほしいですね。
――今後もSPA!では競輪記事を増やしていきたいと思ってるので、よろしくお願いします。
松浦 あ、ぜひ、オファーください!
昨年の松浦選手は初出場ということもあってチャンスがなかったが、今年は大丈夫と語った松浦選手。より精度が増した「松浦作戦」は一体どんな戦法なのか……。その答えが出るまであと数日だ。