更新日:2021年01月09日 04:43
エンタメ

第574回 1月9日「中古とヴィンテージの違い」

・YouTubeで定期的にお薦め本を紹介しているのだが、その作品が無理なく手に入れられるものかどうかはいちいち確認するようにしている。 ・普通に店頭やネットで新品を購入できるタイトルは本当に少なくなっている。新刊の点数が高止まりしたまま市場規模が激減しているから、出版社としては在庫の維持が苦しくなる。あっという間に絶版にしてしまうしかないのだ。 ・絶版本については中古価格を調べる。あまりにもベラボーな値段がついてる場合は紹介を諦めるしかないのである。ただしかなりの高価格でも、それに見合った内容のものだと思えたら、取り上げることにしている。良書なら多少無理してでも買うべきだと思うからだ。が、この考えは賛同を得づらい。そのお金は著者ではなく販売業者に落ちるわけで、このことをよく思わない人が多いのだ。 ・最近、テンバイヤー(転売屋)がとても嫌われている。特にゲームファンは多くの人々が直接的間接的に被害を受けているから、ヘイトがたまっている。そのせいか、多くの古物商までが同類として叩かれる風潮がある。 ・同じ古物商でも転売屋とリサイクルショップとヴィンテージショップは違う。 ……転売屋は、需要が供給を上回っている新製品を買い占めて高額で売る業者だ。 ……リサイクルショップは、不要になった中古品を安く仕入れ安く売る業者。 ……ヴィンテージショップは、個々の商品のマニアックニーズや希少性から独自に価格設定を行う。その結果としてときには定価以上で売る業者である。 ・現在、オンライン上で書籍やゲームソフトなどの売り買いをする業者の多くがヴィンテージショップとして機能している。市場原理競争原理が働いた成果、それぞれのジャンルでマニア層との良い関係ができつつあるのだ。これを壊してしまうべきではない。 ・たとえば十把一絡げのリサイクル品の中から価値のあるものを掘り出す「せどり」は高度な専門作業であり、文化的に意義のある仕事だと思う。著作権者ないし版元の立場からすると、定価より高く売られるケースについてはそれほど被害はない。なぜならその場合コンテンツ価値は毀損されないからだ。 ・あるいは。「プレステ5」を今20万で売ってたらみんなとても怒るわけだが、「光速船」なら同じ値段でも笑顔で買えちゃったりするわけだ。たとえそれが千円で仕入れられたものだったとしても。 ……………………………………………………………………………………………… ※例外的に絶版本を紹介した時のYouTube動画です↓
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。
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