サウナに必要不可欠な水風呂はないものの……
室温が落ち着いてきたところで追いロウリュ。さらに吹きだす汗。たまらず飛び出し、シャワールームに駆け込む。
ひとつの懸念事項だった「冷水シャワーが水風呂の代わりになり得るのか?」問題。蛇口をひねると大量の冷水が頭から降り注ぎ……悪くない! というのもシャワーヘッドが400mm口径と超大型で頭のみなならず両肩・全身に15℃の冷水が降り注ぐため、物足りなさがないのだ。というか逆に水風呂に頭からダイブしたような感覚に陥り、途中からかかとを上げ冷水シャワーを迎えにいってしまったほど。
こちらがシャワー室。肩はおろか全身を包む超ビッグシャワーから舞い降りる15℃の冷水が全身を包む。感覚としては、サウナから出て体を流さずに直で水風呂に飛び込む、禁断の行為に近い
シャワーを浴びた後は、キンキンに冷えた体を休憩スペースに置かれたアームチェアに投げだし、目をつむる。頭上に置かれたサーキュレーターによる柔らかい風が体を包み、外気浴を演出する。身体はキンキンでポッカポカ、脳内は半分意識がない状態。あまりに気持ちがよすぎて心が持ってかれるという恐怖すら感じる、この感覚はサウナーならわかるだろう。
頭上にはサーキュレーターが。外気浴を思わせる心地よい風が、全身に当たる
そして耳にはシガー・ロスの歌声が。これは室内BGMではない。部屋のスピーカーとスマホをブルートゥースで接続できるため、自分の好きな音楽をかけられるのだ。じつは、これこそソロサウナのちょっとした革命なんじゃないかと記者は思う。考えてもみてほしい。サウナ室で汗を流しながら、外気浴でクールダウンしながら、いつでも自分の好きな音が流せるのだ。アッパーでもチルでも、サウナーなら「サウナで聞きたい音」というものが必ずあるはずだ。それが実現できるんだから、やはりこれはちょっとした革命だ。
ブルートゥースとスマホをつなげば、部屋中に自分の好きな音楽が流れる。この気遣いは「サウナ×音」
そしてそのまま2セット目、3セット目をキメ、気が付けば45分経過。普段は一気に4~5セット貪るのだが、なぜか体と心は満ち足りている。室温を自分好みにコントロールできることで、短時間でも深いサウナ体験ができるのかもしれない。体験前は「1時間じゃ短すぎじゃね?」と疑念を抱いていたが、なるほど1時間「が」、ちょうどいいのだ。
「我々にとっては設備費が重たいですけど、お客さんにとってのデメリットはない(笑)」
ほてった体もそのまま、『ソロサウナtune』を運営するtune株式会社の河瀨大介氏に話を聞いてみた。
――そもそも、ソロサウナを作ろうとしたきっかけは?
河瀨:僕もサウナが大好きなんですけど、昨今のサウナブームで、結構ストレスを感じる時があるじゃないですか。サウナに入っても、水風呂が満員で「どのタイミングで出ようかな?」とか「いま水風呂空いたから、このタイミングで行っちゃおう!」とか、自分のペースで楽しめなくなっているのかなと。それを解決するのはソロサウナしかないなと思ったんです。このアイデアは数年前からあったのですが、コロナが始まって事業化を決意しました。
――ソロであることのデメリットはないですもんね。
河瀨:我々にとっては設備費が重たいですけど、お客さんにとってのデメリットはないですよ(笑)。
――あとタトゥーが入ってサウナ施設に入れない人や、そもそも誰かと入りたくない人にもいいですよね。何せソロサウナなんだし。
河瀨:まさにその通りで。同性と一緒に入りたくない方も、おひとりでなら楽しめますし。ソロサウナは凄く幅広くいろんなところに開いているので、本当に自分らしいサウナを実現できるのがtuneかなって思ってますね。
そして最後に、「1時間3800円、高いんじゃね?」問題。しかしこのコロナ禍で外出もままならない今の時代、1回飲みにいったと思えばそんなにぜい沢でもなかろう。決して安い値段ではないが、ここでしか味わえないオンリーワンのサウナ体験ができる。ひと言でいえば、ここはクセになる。
取材・文/村橋ゴロー