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地方移住の先駆者・「ぼっちぼち村」作者が7年間で学んだ田舎暮らしの秘訣とは

7年に及ぶ田舎暮らし

――マンガでは難しいと思いますが、農業では不揃いでフリースタイルな「市橋村長のお茄子」を期待しております。ただ市橋村長が結婚していて、子どももできて、ぼっちでもなくなってしまった。長年のファンの方々は悲しでいるのではないですか。結婚自体は元々20代のときにも一度されてたんですよね? そうなんですよ。 でもモテないのは事実ですし、モテないどころか男女問わず人間に好かれないので、そもそも私が結婚していたことで、悲しむようなファンなぞいないと思ってますが、本当にいるんですか?  もしいるなら、逆に嬉しく思いますんで、ぜひ直接謝罪させてください。なんの謝罪か分かりませんが……。 ――市橋村長が7年前に田舎に移住したのは、SPA編集部の提案がきっかけだったはず。それがいつの間にか、家を買ったり、子育てもして本気じゃないか? 正直、’13年に前身の「ぼっち村」として田舎暮らしを始め、ココまで長く続くとは思ってませんでした。この紙の単行本を出せない不人気漫画の連載だけでなく、田舎暮らし自体が、もっと早く終わると思ったんですけど、自分でも意外です。 変に気負って田舎暮らしをする、と言うこともなく、家も田舎だからこその価格で自分にも買えたとか、要因としては結構いい加減です。ただ妻のA子が一緒に田舎で暮らしてくれる決断をしてくれたのは大きかったかと。 でも実は子供が出来るとは考えていませんでした。それ故に、田舎暮らしと言っても質の高い農業が可能な場所を選んでしまったので、最初から子育てをするつもりだったら、もうちょっと違ったかもしれないです。
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暖炉の上のヤカンにまで、どことなく美大出身夫婦のセンスの良さが垣間見える

――そして2019年、指定難病のもやもや病で大手術で、営農は完全にあきらめたのですよね。 突然の大病には自分でも驚いたんですが、それがなくとも元々営農は無理だろうとは思ってました。農業で食うのは超人以外には不可能だと感じてました。 今の絵を描く仕事などと並行しながら農業もして、赤字にならなければ形の上では営農っぽくなるかなと、そんな挑戦をしてみたかったんですけど、やはりそれも無理だとの結論に至りました。 頭のオペをして無理できなくなったこともありますが、とにかく本当に農業で副収入ってのも、尋常じゃなくきついです。コンビニや牛丼屋でちょっとバイトした方が、確実に楽に稼げると感じました。 なのでその方向での農業は諦めたんですが、子供も出来て、家庭菜園として自分たちで安全安心な野菜を作ることは続けていけたら楽しいだろうと、今は感じてます。

大事なのは逆覚悟

――コロナで地方移住が進むのではないかと言われています。先輩としてアドバイスをお願いします。 今住んでいる「ぼっちぼち村」に移住したのが3年前ですが、私は自分の大病や子供が産まれたことに加え、このコロナ禍の自粛生活で、完全にスタートダッシュに失敗し、正直地元での立場は、空気になってしまってます。 でも、却ってその方が気楽でイイかなと思ってます。やれないことを無理にするのも厳しいですし、上手くやってる移住者を尻目に、自分なりに暮らそうと思ってます。 大事なのは、あかんと思ったら、無理せず出てしまえば良いという逆覚悟です。移住すると、まるで終の棲家として絶対に逃げ出してはいけないと、気張り過ぎてしまう人も多いと思うんですが、仕事や収入の状況だってそうですし、自身の体調などもどう変わるか分からないので、ダメだと思ったら、全然出てしまってもイイと思うんです。 現に私はここまで、4か所の土地を転々と越してきています! 今の家も勢いで買ってしまいましたが、当初想定してなかった子育てを今後考えたり、漫画の仕事がこのまま増えずに終わってしまえば、また引っ越すかもしれません。お金や仕事の悩みは尽きませんが、田舎暮らしはそのくらい気楽に考えて、テキトウにやってます。  田舎暮らしのバイブル『ぼっちぼち村』。表紙に騙されたと思って、どうかポチってください。子育てから野菜づくり、そして地方移住のリアルと失敗しても生きていけるノウハウが盛りだくさんです!
―[ぼっちぼち村]―
自称・崖っぷち漫画家。「敗北DNA」(KADOKAWA刊)、「漫画家失格」(双葉社刊)などモテない男や、生きづらい人間の群像漫画を主に描き、カルト的な人気を誇る。SPA!では'11年に「アラだらけ君」を連載後、田舎暮らしと農的生活を描く「ぼっちぼち村」を連載

ぼっちぼち村1

農業経験ゼロ、社交性ゼロ、才能ゼロの漫画家が田舎暮らしをはじめます!


アラだらけ君

『非モテ男子』の生態が凝縮


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