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<純烈物語>レッドブルを飲んで奮闘する里見黄門様に仰天した名古屋の夜<第89回>

水戸光圀公の“孫”である酒井一圭

 酒井にとって、水戸黄門はテレビで見る以上に近いところへ在った。というのも、初代黄門役で知られる東野英治郎の息子・東野英心が『逆転あばれはっちゃく』で父親役を務めている。  はっちゃく役の酒井にとっての父が東野英心ということは……黄門様は自分のお爺ちゃんだ!と思った。誰も知らぬうちに、一圭少年は何食わぬ顔で水戸光圀の孫になっていたのだ。  そして、決定的な出来事が2000年11月に訪れる。『星獣戦隊ギンガマン』『救急戦隊ゴーゴーファイブ』と立て続けに最終オーディションで落ちていた酒井は、それでもめげることなく『百獣戦隊ガオレンジャー』も受けた。そこでは「これはいける!」と自身で思えるほどの手応えがあった。  それで気持ちが高ぶり、オーディションを受けた日の夜は寝られなかった。朝になり当時、一緒に住んでいた彼女へ「俺、絶対受かると思うんだ」などと話す。  すると、朝のワイドショーで「俳優の東野英心さんが亡くなられました」とのニュースが流された。当然、かつての父の訃報に「ええっ!? ちょっと待ってよ……」となったが、そこで酒井はガオレンジャーのオーディションに受かったと改めて思えた。 「あの瞬間、大変だけど俳優は面白いからやめるなよ。諦めずに頑張れと英心さんに言われた気がしたんです。その2時間後に事務所から『ガオブラック役で受かりました』と連絡が来て。自分の親父が亡くなった時に、紅白へ出られるって思ったのと近い感覚だったな。  だから、東野英治郎さんと英心さんの存在はずっと頭のどこかにあって、純烈を結成する時も、紅白に初めて出られた時も東野家のお墓にいっていたんです。英治郎さんにはお会いしたことなかったけど、お墓にいけば英心さんとともに、黄門様にもお手を合わせることができるじゃないですか。そういうところから、つながったんですよね」  子どもの頃に水戸黄門の孫を自称していた酒井が、東野英治郎演じるご老公様へ長きに渡り仕えた佐々木助三郎でもある里見浩太朗の隣に立ち、助さんになる。確かに、ちゃんとつながっている。

勝手に面白くしちゃうのが自分の思考パターン

 あばれはっちゃくが助さんをやるのも、ガオブラックが時代劇の王道を演じるのも、東野父子は笑って喜んでくれているに違いない。変わらぬ思いこそが、物事を形にする源となるのだろう。 「英心さんは、あばれはっちゃくのお父さんをやる前にウルトラマンタロウの副隊長役をやっていらっしゃるんです。だから僕は、いつかウルトラマンの隊長役をやってみたいと思っちゃうタイプ。  今思うと、脚を骨折して夢に前川清さんが出てきたのを勝手に純烈をやるためのお告げととらえたのも、自分の思考パターンなんだと思うな。俺は水戸黄門の孫だとか、勝手に面白くしちゃう。それを真に持っていこうとする深層心理は、あるような気がしますね」  出演が決まり、初めて自分が助さん役と聞いた時は酒井自身、意外に思ったという。「白川(裕二郎)と小田井(涼平)さんが助さん・格さんで、自分は悪い役だと思っていたんです。純烈ではリーダーなのが、メンバーに倒されるというストーリーも面白いだろうな」と勝手に描いていたのだ。  でも、いざ台本を受け取って役作りを始めると、助さんには自分が一番合っていると思えた。格さんより少し緩くて女好き。これなら地を出してやれる。
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「里見さんは『SLAM DUNK』の安西先生」のよう
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