仕事

花王がカネボウとブランド統合。コロナ禍で変わる化粧品事業の生き残り策とは

美容部員

写真はイメージです

美容部員に頼らないEC化を進める

 花王は、2021年4月1日にグループの美容カウンセリング会社「ソフィーナビューティカウンセリング株式会社」と「カネボウビューティカウンセリング株式会社」を統合し、新たに「花王ビューティブランズカウンセリング株式会社」を設立します。  新会社では、美容部員によるプロフェッショナルなカウンセリング活動を通じて、花王化粧品事業が有するブランドの世界観・価値観の伝達と、愛用者の維持・拡大の活動を一層強化していくとしています。高価格帯のスキンケア商品を販売していくためには、カウンセリングを行って販売するため、美容部員の存在が欠かせないわけです。  しかし、美容部員を大きく抱えると高い人件費がかかり、利益率を低下させることにも繋がります。美容部員だけに頼らず、EC売上高を高めることがカギになってきます。花王の化粧品事業のEC化率は10%程度だと、20年7月の決算説明会で述べています。  一方、化粧品業界で一歩先をいく、資生堂のEC化戦略は、高価格帯化粧品のEC売上高比率を現在の20%から28年までに35%まで引き上げる目標を掲げています。花王もブランド統合後、どの程度利益率を高めることができるのかがポイントになってきます。

中国マーケットのシェア拡大

 中国のスキンケア市場は366億ドルのマーケットであり、コロナ禍でも拡大を続けています。20年の花王の化粧品事業の中国売上高は前年比20%増と好調でした。日本のマーケットよりもEC化が進んでいることが売上高を支えています。また、資生堂も中国マーケットのシェアを拡大しようと計画しています。  中国を視野に入れると、ロレアル、米エスティ―ローダなどの海外勢とのシェア拡大競争が意識されます。花王とカネボウの統合に時間を費やすことで、シナジーを生み出すことができずに、資生堂に遅れを取ってしまった花王ですが。花王の手元資金は3000億円以上あり、財務面に強みを持ちます。高価格帯の化粧品事業のテコ入れや中国を含むグローバル展開も十分に可能なポテンシャルがあると言えるでしょう。
馬渕磨理子

馬渕磨理子

経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
1
2
おすすめ記事