9万人が入国するリスク
多くの国民の反対の世論を押し切って、開催し一時は盛り上っても、もし各国を代表するオリパラ選手間で大規模なクラスターが起きたらどうなるだろう。100人規模の集団感染が起き、オリンピック競技がその一部でも中止されたり、選手や各国の選手団のメンバーが感染症のために入院するようなことになれば、無理やり開催したと政権に致命的な打撃となることは間違いない。
日本は感染が始まってから1年以上経っても海外からの新種の変異型ウィルスの国内流入を阻止できていない。水際対策が全くできないのだ。3月から心配され、4月に入り日本各地で海外からの変異型ウィルスが猛威を振るい大阪などでは医療崩壊状態になっているにもかかわらず、やっと5月10日からインドからの入国者の水際対策を強化するという。ザ・後手後手なのだ。
それが、五輪選手だけで1万人以上の入国があり、全体では最大9万人もの入国が見込まれるオリパラ大会で感染対策を万全にできると言われても、果たして実行できるのか疑問に思うのが当たり前だろう。
違約金はないが「全損害は日本がかぶる」という不利な契約
国民の命と健康を第一に考えて、感染が収まらない今年のオリンピックは延期か中止する。そんな当たり前の判断をなぜリーダーたちはできないのか。そう疑問に思う人は少なくない。
4月に入りチラホラと言われるようになったことが2つある。それは、1つは、実は東京オリパラを日本側から中止することはできない。もう一つは、万が一、日本側から中止するようなことがあれば、莫大な違約金を請求される、というものだ。
だから日本側から中止を求めることができないという。その噂は事実なのか?
日本側とIOCが取り交わした契約書「
開催都市契約2020」が公表されているので読んでみた。以下、気になるポイントを5つ書いておく。
ネット上で公開されている「開催都市契約2020」
その1:オリンピック大会に必要な施設の建設、費用の調達、人員の調達、運営する
全責任は日本側にある。オリンピック憲章とIOCの基準に基づき、すべての金を調達し建設し運営する責任が開催都市にあるというものだ。(1条ほか)
その2:IOCとその関係機関や、スポンサー、サプライヤー、ライセンサーなどが直接、間接にかかわらず損害を被った場合は、
そのすべてを日本側が補償し、また、損害を被らないようにしなければならない。(9条)
契約書9条。NOC=日本オリンピック委員会、OCOG=オリンピック大会組織委員会
決めるのはIOC、日本側は「要求できる」だけとは!
その3:大会に関わる財産権は
すべて永久にIOCに帰属する。(41条)
その4:
IOCは大会が始まった後であったとしても、戦争状態、内乱、ボイコット、国際社会の禁輸措置の対象、その他、大会参加者の安全が、理由の如何に問わず、深刻に脅かされると判断した場合、いつでも
本大会を中止する権利を有する。(66条)
その5:本契約の締結日には予見できなかった不当な困難が生じた場合、東京オリンピック組織委員会は合理的な変更を考慮するように
IOCに要求できる。ただし、その変更は本大会、または、IOCのいずれに対しても悪影響を与えないこと。その変更はIOCの裁量に委ねられること、また、IOCは変更への同意などの義務を負わない。(71条)
かなり日本側が不利であることは間違いないようだ。