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五輪中止“日本には決定権がない” というIOCのボッタクリ契約。中止したらどうなる

IOCが開催強行したら、世界を敵に回す?

 さて、まとめてみよう。  大会の中止の最終決定権が契約上はIOC側にあるのは、どうやら間違いなさそうだ。しかし、中止を日本側から申しでることは可能のはずである。それをIOCが受け入れて中止を決定すればいいだけの話だ。  IOCは、開催の可否について、WHO(世界保健機構)の勧告に従うというが、それはIOC主導の大会中止のケースだろう。未だ世界の感染者が増え続けている状況の下、日本側から中止の提案をすることは理に叶っている。  最悪の場合は、IOCが合意しないまま、日本から一方的な開催中止をする場合だ。その場合は、契約に基づく、追加的な損害負担を求められることは多いに有り得るだろう。
トーマス・バッハIOC会長

トーマス・バッハIOC会長(2020年1月、スイス)(C) Eric Dubost

 しかし、その場合であったとしても、国際世論が全面的にIOC側につくとは考えられない。何しろ、すでに欧米の主要メディアから、この夏の東京大会の中止を勧告する記事が相次いでいる。これが世界の世論なのだ。  万が一IOCと日本側が係争状態になったとしても、新型コロナウィルスで生じた中止に対して莫大な損害請求をするようなことはIOCも難しいだろう。それでなくても費用がかかりすぎだと開催に立候補する都市が減っているからだ。さらに国際的な司法の場で争ったとしても一方的に日本側が負けるとも思えない。

スポンサーが賠償請求するとは限らない

 また、万が一日本側が莫大な損害金を請求され支払うことになったとしても、政府は昨年度の予備費だけで9兆円のコロナ関係の予算を組んでいた。数千億円の出費を国民の命と健康を守り、コロナ対策に専念するためのものだ、と説明すれば多くの国民が納得してくれると思うのだ。  いったい、どのような損害が考えられるだろうか。  オリンピックと金でよく言われるのが、アメリカのテレビ放映権料だろう。その莫大な放映権料のために、アメリカで人気のある競技はアメリカのゴールデンタイムに合わせて実施されると言われる。実際どのくらいの費用をアメリカのテレビ局は払っているのだろうか?  東京大会の放映権を獲得しているのはNBCで、実は夏冬4大会分の放映権をまとめて獲得していて、東京大会がその最後のものになる。金額は44億ドル(約4840億円)だ。単純に考えると1大会1200億円というわけだ。もちろん、この金額がすべてIOCのものになるわけではなく、800億円ほどは東京オリンピック組織委員会に分配されると言われる。  また、日本国内スポンサーは68社あり、2020年大会に向けて3700億円のスポンサー料を払って(一部は物品提供)おり、昨年7月には1年延期になったことによる220億円の追加負担にも応じている。これに加えてインターナショナルなスポンサーも絡んではくる。しかし、いずれもすでに広報活動は数年に渡って行われており、たとえ東京大会が中止になったとしても、その全額を日本側に返還請求されることはないだろう。  いずれにせよ、国民の命と健康を守ることから考えると大した請求額ではないと言えるのではないだろうか。
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去年の時点で「2年延期」と交渉していれば…
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