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ワクチン接種を上司が優先、非正規は後回し。「職域接種」に不満の声も

非正規社員は後回し

落ち込む だれが真っ先にワクチンを打つか、ということで起きるトラブルは予想以上に多そうだが、なかでも目立つのが非正規雇用者への処遇である。全雇用者の5人に2人が非正規雇用者と言われている昨今。ワクチンを巡ってもその冷遇ぶりが際立つ。 「スタッフの4分の3が非正規社員なのですが、ワクチンの案内は非正規には配られませんでした。余剰分が非正規に、という話だったそうですが、家庭内の状況などの聞き取りは行われず、社員が個別に仲のいい非正規の部下にすすめて回っています」  こう話すのは、関西地方の介護系事業会社勤務・坂田春菜さん(仮名・30代)。それからすぐ、坂田さんの元にも「ワクチンを打つか」という話が回ってきたそうだが……。 「予約の方法について非正規の同僚と話をしていると、部署内に未接種の正社員はいないか確認してからにしろ、と社員の上司に釘を刺されました。まずは正社員の接種を完了して会社に報告しなければならない、という立場上の理由もあるようですけど」(坂田さん、同)

人間関係がギクシャク

 こうなってくると、当然、非正規社員は引け目を感じてしまい、自ら「接種したい」とは言い出せなくなる。 「怒った非正規の同僚は意固地になって、もう意地でも接種しないと。非正規の間でも人間関係がギクシャクするようになってきました。ワクチンさえあればコロナ禍は終わる、と思っていただけに、ワクチンがあっても人間はこうなってしまうのかと……」  関東地方にある大手企業内の診療所勤務・中野真知子さん(仮名・40代)も、ワクチンを巡る社内トラブルについて次のように話す。 「部署によっては、上司の誰々さんが打ってないからまだ予約できないと話している若い社員がいましたね。あと、どんな部署にも必ず一定数いるのが、いわゆる“反ワクチン”の方。自分は打たない、というだけならまだいいのですが、打っている人たちに対してアレコレ言うなど、社内で軋轢が生まれているのだとか」(中野さん)  コロナをめぐり、あらゆる場面で「分断」が起きている。上司と部下、正社員と非正規社員……ワクチンの「職域接種」も例外ではないようだ。 <取材・文/森原ドンタコス>
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