「刑務所」ではテレビが第一級の娯楽。受刑者たちに人気の番組とは
罪を犯した受刑者が収監される「刑務所」。真面目に暮らしている人ならば、一度も入ったことなどないはずだ。いわゆる“塀の中”、一般社会から隔離された世界である。インターネットやSNSが発達した今でも未知の部分が多い。
受刑者は当然、刑務所内でスマホやパソコンを使うことはできない。生活は刑務作業が中心となるが、何を楽しみに日々を過ごしているのか。
ここでは、桐蔭横浜大学副学長・教授で、元法務省刑事施設視察委員会委員長、刑務所や少年院、女子少年院などの矯正施設を誰よりも視察してきた河合幹雄氏による新刊『現代 刑務所の作法』(ジー・ビー)から一部を抜粋。イラストの解説付きで紹介する。
パソコンはおろか、スマホもタブレットもない刑務所では、テレビが第一級の娯楽である。隔離受刑者を収容する独居房にはテレビはない部屋もあるが、雑居房、夜間独居房、工場の食堂には設置されている。
刑務所によって異なるが、平日であれば午後7〜9時までの2時間ほどテレビを見ることが許される。休日は午前8〜10時までと、午後6〜9時までの計5時間ほどテレビ視聴の時間がある。
ただし、どんな番組でも見られるわけではなく、放映されるのは指定されたチャンネルや検閲後に視聴が許可された番組の録画のみである。ちなみに、雑居房ではチャンネル争いでケンカにならないよう、「チャンネル権」を持つ受刑者が決まっているという。
人気なのは野球中継、大相撲などのスポーツ番組、歌番組など。ノンフィクションものもよく見られる。ニュースなどの報道番組はラジオで流されることが多いが、その内容も検閲後に放送される。暴力団の抗争や脱獄に関するニュースなどが流れると、受刑者を不要に刺激することにもなりかねないからである。
テレビ・ラジオと並んで受刑者にとって娯楽の王道といえるのが読書だ。本は差し入れてもらえるが、検閲によって入手できないことも多い。さらに、作業報奨金が月に約4500円程度の受刑者たちにとっては、本はかなりの贅沢品といってよいだろう。
そのため、刑務所内にある図書室で「官本(かんぼん)」と呼ばれる刑務所が所有する本を借りることもできる。レンタル期間はおよそ1カ月で、料金は無料だが、ほとんどが中古品で新品は望めないという。新聞は一般紙のほか、スポーツ新聞を購読でき、週刊誌や月刊誌なども受刑者が購読を希望し、お金を支払えば読むことができる。
テレビが第一級の娯楽、指定されたチャンネルや検閲後の映像を視聴
お金を支払えば週刊誌や月刊誌を読める
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法社会学者。京都大学大学院にて法社会学専攻後、フランスの名門法学研究科であるパリ第2大学へ留学。その後、京都大学法学部助手を経て、現在、桐蔭横浜大学法学部教授・副学長。公益財団法人矯正協会評議員、全国篤志面接委員連盟評議員も務める。ほか、日本犯罪社会学会理事、日本法社会学会理事、日本被害者学会理事を務め、警察大学校教員、嘱託法務省刑事施設視察委員会委員長などを歴任した。著書に『日本の殺人』(ちくま新書)、『もしも刑務所に入ったら』(ワニブックス)など。
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