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トイレが外から丸見え。雑居房ではストレス満載の「刑務所」生活

 罪を犯した受刑者が収監される「刑務所」。真面目に暮らしている人ならば、一度も入ったことなどないはずだ。いわゆる“塀の中”、一般社会から隔離された世界である。インターネットやSNSが発達した今でも未知の部分が多い。
刑務所

※写真はイメージです

 受刑者が日々を過ごすことになるのは、一般的に「雑居房」あるいは「独居房」だ。そこは一体、どんな場所なのか。  ここでは、桐蔭横浜大学副学長・教授で、元法務省刑事施設視察委員会委員長、刑務所や少年院、女子少年院などの矯正施設を誰よりも視察してきた河合幹雄氏による新刊『現代 刑務所の作法』(ジー・ビー)から一部を抜粋。イラストの解説付きで紹介する。

トイレは外から丸見え! ストレス満載の雑居房生活

雑居房

雑居房の様子。12畳ほどの空間で6人が定員。机で食事を摂ったり手紙を書いたり、読書をする。囲碁や将棋が1セット設置してあるという。トイレの壁は透明ガラスで中が見えるようになっている

 刑務所に収監された受刑者が日常生活を送る部屋は2種類ある。雑居房と独居房だ。  雑居房は病院の大部屋、独居房は個室と考えるとイメージしやすいかもしれない。雑居房は12畳程度の広さがあり、定員は6人となっている。それでも一時期、定員6名に対して8〜9人の受刑者が身を寄せ合っていることがあった。  いわゆる刑務所の過剰収容問題だが、現在は緩和されている。雑居房で暮らす懲役囚は、平日の昼間は刑務作業に出るのが原則となっている。  そこで休憩などを含めて1日9時間を過ごすわけだが、それ以外の時間は雑居房から一歩も出ることができない。トイレや洗面台が設置されてはいるものの、トイレは外から中が見えるようになっていて慣れないうちは落ち着かない。雑居房はとことんプライバシーのない場所なのだ。

口論程度は日常茶飯事

 罪を犯して収監されているのだから不満のいえた筋合いではないが、このような状況なのでストレスが溜まる。口論程度は日常茶飯事で、それがケンカに発展することもある。とはいえ、だからといって部屋を出て行くわけにはいかない。同房の者と折り合いが悪くとも、耐え忍ばなければならないのだ。それも懲役が終わるまでの長期間である。  そこで、なめられないように虚勢を張る受刑者もいる。シャバでの権力や裕福さを過剰にアピールする作戦だ。いわばハッタリだが、当然バレたときは逆効果となってしまうため、さじ加減が重要である。  誰も彼もがストレスにさらされた日々を送る雑居房。火に油を注ぐことがないように、イビキの習慣がある者は、みんなが寝静まったのを見はからってから眠りにつくという。不要なもめ事を回避するため、ときには涙ぐましいまでの努力が必要なのだ。
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独居房へ収容されるのはどんな人?
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法社会学者。京都大学大学院にて法社会学専攻後、フランスの名門法学研究科であるパリ第2大学へ留学。その後、京都大学法学部助手を経て、現在、桐蔭横浜大学法学部教授・副学長。公益財団法人矯正協会評議員、全国篤志面接委員連盟評議員も務める。ほか、日本犯罪社会学会理事、日本法社会学会理事、日本被害者学会理事を務め、警察大学校教員、嘱託法務省刑事施設視察委員会委員長などを歴任した。著書に『日本の殺人』(ちくま新書)、『もしも刑務所に入ったら』(ワニブックス)など。

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現代 刑務所の作法

知っているようで知らない刑務所生活のリアルとは? 意外と普通、もしくはあり得ない話ばかり? その事実を詳細な解説文と分りやすいイラストで解説。
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