刑務所の食事が“臭い飯”と呼ばれるワケ。本当に臭いのか
罪を犯した受刑者が収監される「刑務所」。真面目に暮らしている人ならば、一度も入ったことなどないはずだ。いわゆる“塀の中”、一般社会から隔離された世界である。インターネットやSNSが発達した今でも未知の部分が多い。
漫画やアニメの世界では、受刑者の服装は白黒のシマ模様で表現されることも少なくない。また、刑務所の食事は“臭い飯”などと呼ばれることもあるが、実際のところはどうなのだろうか。
ここでは、桐蔭横浜大学副学長・教授で、元法務省刑事施設視察委員会委員長、刑務所や少年院、女子少年院などの矯正施設を誰よりも視察してきた河合幹雄氏による新刊『現代 刑務所の作法』(ジー・ビー)から一部を抜粋。イラストの解説付きで紹介する。
シャバと呼ばれる一般社会にいる人は、自分が着たい服を着ることができる。だが、刑務所の中ではそうはいかない。ちなみに、留置所と拘置所での服装は私服だが、自殺防止の観点から着用できる服の種類には制限がある。
最も大きく制限されるのが刑務所だ。刑務所で着られるのは、国から貸与された衣服だけである。
受刑者の衣服は、通常着ることになる「舎房衣(しゃぼうい)」、刑務作業をする工場で着る「工場衣(こうじょうい)」、寝る際に着る「寝巻(ねまき)」である。
囚人服というと、古い漫画やアニメに出てくるような白黒のシマ模様の服を思い浮かべるかもしれないが、舎房衣も工場衣もシマ模様ではない。舎房衣はグレーの霜降りで、工場衣は黄緑である。唯一、シマ模様なのはパジャマだが、横シマではなく、グレー地に黒の縦シマだ。
舎房衣は通年用だと、上衣とズボン1本が支給される。このほかには、パンツ3枚 、丸首 シャツ1枚 、靴下3組、サンダル1足、夏用の舎房衣として半袖 の上衣と半ズボン、冬は厚手の下着上 下2組、チョッキ1枚が支給される。
工場衣は通年のものとして、上衣とズボン1本、帽子1個、丸首シャツ1 枚、靴下3組、サンダル1足、運動靴1足が支給される。冬には厚手の下着上 下2組とチョッキ1枚も支給される。
ここで紹介した衣服は国から貸与されたもので、受刑者のものではない。だが、受刑者が自分で購入したり、差し入れされたりすることが許される服もある。
とはいえ許可されているのは、丸首シャツ、パンツ、靴下、ランニングシャツ、運動靴、やや厚手の下着上下——国から貸与されるものとまったく同じである。メガネも入所前に使用していたものの持ち込みや購入が可能だが、派手なデザインのフレームは認められていない。
刑務所の中で着用するのは基本的に国からの借り物
購入や差し入れが許される服も
1
2
法社会学者。京都大学大学院にて法社会学専攻後、フランスの名門法学研究科であるパリ第2大学へ留学。その後、京都大学法学部助手を経て、現在、桐蔭横浜大学法学部教授・副学長。公益財団法人矯正協会評議員、全国篤志面接委員連盟評議員も務める。ほか、日本犯罪社会学会理事、日本法社会学会理事、日本被害者学会理事を務め、警察大学校教員、嘱託法務省刑事施設視察委員会委員長などを歴任した。著書に『日本の殺人』(ちくま新書)、『もしも刑務所に入ったら』(ワニブックス)など。
記事一覧へ
記事一覧へ
『現代 刑務所の作法』 知っているようで知らない刑務所生活のリアルとは? 意外と普通、もしくはあり得ない話ばかり? その事実を詳細な解説文と分りやすいイラストで解説。 |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ