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「刑務所」ではテレビが第一級の娯楽。受刑者たちに人気の番組とは

お菓子片手の映画鑑賞は、模範囚だけの特権

映画鑑賞会

月に1〜2回、休日に映画鑑賞会が開催され、模範囚のみ参加できる。映画の内容は過激な描写が少ないヒューマンストーリーやアクション映画が多い。ただし、上映時間は1時間程度。長い映画は2度に分けるときもある

 刑務所内で行われるイベントの中でも、受刑者が最も楽しみにしているのが慰問である。1カ月に1度の割合で行われる、漫才師や落語家、歌手などによるショーやコンサートのことだ。歌手で俳優の杉良太郎が15歳のときから60年以上も慰問を続けているのは有名な話。ちなみに、刑務所に慰問で訪れるのはすべてボランティアである。  休日には「集会」と呼ばれる映画鑑賞会が月に1〜2回開催される。この集会に参加できるのは模範囚だけで、 鑑賞する映画は、受刑者を刺激しないように過激な内容は避けられ、ヒューマンストーリーや、アクション娯楽作品などが多い。教育担当の刑務官が事前に内容を確認し、自費でレンタルして上映しているそうだ。
映画鑑賞会

映画鑑賞会ではお菓子を食べることができる。刑務所では普段お菓子を食べることができないため、それを目当てに参加している受刑者が多いという

 ちなみに映画鑑賞会が人気な理由は、映画を観ながら菓子を食べられることにもある。お金を持っている受刑者はお菓子を購入し、この時間に食べてよい。菓子を食べる数少ない機会として、多くの受刑者が楽しみにしているのだ。

運動会は刑務所で一番盛り上がるイベント

 また、毎年10月に行われる「工場対抗大運動会」も人気である。ほかのイベントと異なり、運動会だけは受刑者も主体的に関わることができる。役員選びやプログラムづくり、出場選手の選考など、刑務官と一緒に運動会をつくり上げていく。  工場対抗のため担当刑務官と受刑者が一丸となって優勝を目標に頑張るのだが、当日も刑務官は任務のため、担当の工場の者が勝っていても一緒に盛り上がるわけにいかず、黙々と監視を続けているそうだ。運動会の昼食には、白米の弁当が提供される。刑務所で白米を口にできるのは運動会以外では正月三が日のみ。また、おやつが支給される刑務所もあり、正月と同じくらい盛り上がる。 <監修/河合幹雄、イラスト/熊アート>
法社会学者。京都大学大学院にて法社会学専攻後、フランスの名門法学研究科であるパリ第2大学へ留学。その後、京都大学法学部助手を経て、現在、桐蔭横浜大学法学部教授・副学長。公益財団法人矯正協会評議員、全国篤志面接委員連盟評議員も務める。ほか、日本犯罪社会学会理事、日本法社会学会理事、日本被害者学会理事を務め、警察大学校教員、嘱託法務省刑事施設視察委員会委員長などを歴任した。著書に『日本の殺人』(ちくま新書)、『もしも刑務所に入ったら』(ワニブックス)など。
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現代 刑務所の作法

知っているようで知らない刑務所生活のリアルとは? 意外と普通、もしくはあり得ない話ばかり? その事実を詳細な解説文と分りやすいイラストで解説。
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