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熱海の土砂災害現場で注目された災害救助犬は真のエリート/小笠原理恵「自衛隊の“敵”」

被災者以上のつらさを救助隊が経験することに美徳を感じる風潮

「被災者がつらい目に遭っているのに、救助者がゆっくりと休息や栄養を取るのは許せない」という感覚を持つ人も多いと思います。災害派遣の現場では自衛隊員は隠れて冷たい缶めしやレトルト食品を食べることが多いようです。そして、疲れ果てても冷たい床に寝具もなしに雑魚寝をしていたころもありました。自衛隊員は我慢に我慢を重ねていました。この被災者以上のつらさを救助隊が経験することに美徳を感じる風潮も続きました。これが災害派遣時の自衛隊員の活動を阻む“敵”でした。  交代して次の救助活動を始めるまでに、救助に当たる自衛隊員が十分な栄養と休息をとって英気を養ったほうが多くの人を救助できるはずです。被災者と同じ辛い目に自衛隊員をおいて、その体力を奪えばそれだけ五感も働かなくなり、救助範囲も狭まります。被災者に温かいお風呂と十分な栄養と睡眠をとってもらうのは当然のことですが、自衛隊員など救助者も被災者と同じ人間です。十分な栄養をとって温かいお風呂に入って柔らかな寝具でちゃんと睡眠をとってもらいたいものです。  被災地の人々の苦しみをないがしろにしないでほしい。同じ苦労を共感してほしいという心情はあるでしょう。  でも、視点を変えてみてください。泥まみれになって救助で疲れ切った救助犬はきれいに体をあらってもらい、ごはんや水をもらいます。この犬にそんなのは贅沢だと一切世話をしなければ犬と人間の信頼関係はなくなります。入念に足の裏や体に怪我がないかチェックした後に災害救助犬たちはお気に入りのオモチャで遊んでもらいます。無邪気に嬉しそうな災害救助犬に「ご褒美がもらえてよかったね」と多くの人が微笑んでいます。この暖かい心を自衛隊員や他の救助隊にまで広げてほしいと思います。

せっかく買った災害派遣用簡易ベッドを使ってください!

自衛隊の“敵” 2020年1月4日の日刊SPA!に「自衛隊員「雑魚寝」問題に光――補正予算でベッド9900個購入へ!」という記事を書きました。このときに補正予算で災害派遣用の簡易ベッドが大量に買われ、実際に災害派遣で使われました。9900個という数は全自衛隊員にはいきわたりません。だから、災害の発災現場近くに簡易ベッドが保管されていなければ災害派遣に使えないのではと心配していました。でも、近くに簡易ベッドがあっても災害派遣で使わず封印されているものが多いと聞き、疑問に思っています。  この災害派遣用に買われた簡易ベッドの災害時使用許可がおりないそうです。災害派遣で使えば泥だらけで破損することもあるため、大事にしすぎて使えないのです。雑魚寝のような劣悪な環境を改善するために買った簡易ベッドなのですから、使ってください!  自衛隊は予算が足らず、新品の状態で保管したいという事情は想像できます。自衛隊では買ったものが壊れても修繕や買い足す予算はなかなか出ません。だからある程度のまとまった数のものは非常時、有事に残しておきたいのでしょう。「欲しがりません。勝つまでは」という言葉は、敗戦末期に日本で唱えられたスローガンです。これで日本は戦争に負けました。私たちは同じ間違いを繰り返してはいけません。 「欲しがります! 次は勝つんで!!」  これをスローガンに装備品は補充してもらえる自衛隊に変えましょう。しっかり休養を取り、力いっぱい 自衛隊員も災害救助犬も働ける環境になればいいですね。 <文/国防ジャーナリスト・小笠原理恵>
―[自衛隊の“敵”]―
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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