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妻へのモラハラをしていた男性が、その加害者心理を振り返る

加害者は、自分のニーズのために行動している

 一体、DV・モラハラ加害者はなぜこのような行動を取っているのでしょうか。プレゼントや親切に対して、なにか感謝やポジティブな感情などの「報いる行動」を期待し、それに応えないとキレるのはなぜなのでしょうか。  それは、加害者が自分のニーズを満たすために行動しているからなのです。  例えば「アクセサリーを贈ったのに付けてこないなんて失礼だ、返せ!」などと言う人は、相手が自分に感謝することを目的として行動しているのです。究極的には、相手が喜んでいるかどうかなんてどうでも良いのです。相手のニーズではなく、自分のニーズしかみていないのです。  もしも本当に相手のことを思って何かを贈るのならば、率直な感想をもらった方がいいのです。「そっか、あんまり好みじゃなかったかあ。他にはこんなのが候補だったんだけど、どういうのが好きかな?」と言える人なら、きっと次は相手が心から喜べるものを贈れるはずです。  しかしそんなことを実際に言ったときには「素直に喜べないなんて恩知らずなやつ。わがままで欲張りで見栄っ張りなお前みたいなやつはしょせん〜」などと怒り出すでしょう。  ここで卑劣なのは、加害者は自分のニーズが満たせなくて怒っていることを言わずに、あくまで「一般的に考えて」とか「普通はまず感謝でしょ」などと、自分のニーズとは関係のないことかのように話すことです。

「あなたのため」という言葉はただの支配欲求

 これによって、私が間違っているのかなとか、自分がそれを我慢して喜んでいればよかったのかな、と被害者の方を苦しめるのです。そんなわけありません。相手が被害者のニーズを真に満たしたいなら、つまり被害者を愛しているなら、率直な感想を喜んで受け入れるはずです。そうすることで、次は被害者が心から喜んでもらえるのかもしれないのですから。  「ぼくは、わーすごい嬉しい、って喜んでアクセサリーをつけてきて、ありがとうねって何回も言われたかったのに、なんでそうしないんだ。ぼくの自尊心を満たせよ!」というのがあまりにも幼稚な欲望であることを本人もどこかで自覚しているのかもしれません。  だからこそ、一般論、常識、普通といった言葉を使って、自分のニーズを隠した上で相手を責め立てるのです。  先程の僕の例も同じことです。鬱っぽい妻に本を贈ることで「精神的な病に理解のあるオレ、すげー」というセルフイメージを満たすというニーズに基づいて行動していたのです。  妻は喜んで本を読み、あっという間に元気になり「えいなか(筆者)のおかげだよ、ありがとう!」と言うべきだったのです。さらに言うと「早く元気になって、妻は僕のケアをするべき」なのです。  驚くほどに、これらのニーズの中に一つとして妻のニーズはありません。すべて、僕の幼稚なニーズです。にも関わらず、僕は妻がこれらの行動をとる「べき」と考えていたのですから恐ろしい。
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DV・モラハラを見抜く・自覚するポイント
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DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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