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アサヒ×キリン、ビール業界の巨人阪神戦。現在の勝者はどっちだ

アサヒ過去最高益の要因

アサヒビール 生ジョッキ缶

アサヒビールHPより

 これらの売上収益構成比をさらに詳しく見ていきましょう。まずは、国内市場が成熟するなかで、国際事業が39%占めているアサヒ。  これは、M&Aによる海外企業の買収によるものです。2016年から2017年にかけて、アサヒは1兆円以上を投じて欧州、さらに2020年6月には約1.1兆円で豪州事業を買収しています。この狙いは、販路・商品群を広げて海外事業を通じて成長すること。これが同社の業績にも反映しています。  足元のアサヒの業績を見ると、2021年12月期第1四半期決算は四半期ベースで過去最高益を達成しています。売上収益が前年同期比11.6%増の4567億円、本業の儲けを示す事業利益が同78.3%増の283億円と、持ち株会社体制に移行した2011年以降でいずれも四半期ベースで過去最高です。  しかしその要因は、買収によるものなのです。2020年に買収した豪州のビール事業の底上げによるもので、本業の儲けによるものではないのです。実は、大黒柱である国内酒類事業は、業務用の比重が高いだけに、大苦戦を強いられています。

アサヒの「生ジョッキ缶」はヒットしたけれど…

 あれ? それでも明るいニュースがあったはず?そう思った方もいるのではないんでしょうか。わかっています。  開栓するときめ細かい泡が自然に発生し、飲食店のジョッキで飲む樽生ビールのような味わいが楽しめる新商品、今年4月に発表した「アサヒスーパードライ生ジョッキ缶」の存在ですよね。この「生ジョッキ缶」が品切れ続出となっているニュースをSNSで目にした方も多いでしょう。  しかし「バズっていること」と売れていることは違います。  実は、アサヒは需要を見誤り供給が全く追いついていないため、ヒットしたものの、収益貢献には至っていないのです。この需要の取りこぼしも、大きな痛手となっています。  とはいえ、ヒット商品は他にもあります。アルコール度数わずか0.5%の微アルコール飲料『ビアリー』。これは三塁打レベルのヒットを放っています。 この微アルコール飲料、起死回生の一打になるかもしれません。アサヒビールによれば、20~60代人口8000万人のうち、日常的に飲酒を楽しむ人は2000万人。それ以外の「飲むこともあれば、飲まないこともある」層に「微アルコール」の商機があると同社は考えています。つまり、アルコール飲料市場はまだまだ成長の余地があるのです。
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キリンが見つけた成長源
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