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アサヒ×キリン、ビール業界の巨人阪神戦。現在の勝者はどっちだ

ネオンが消えた2021年

ガード下 有楽町

写真はイメージです(Photo/pixta)

「今度、よかったら飲みに行きましょう!」  こんなセリフを口にしなくなり、早くも1年以上が経過した日本。ガード下の赤提灯に灯がともらなくなり、駅前のネオンが輝きを失った2021年は、日本人の中で間違いなく「居酒屋でアルコールを飲まなかった一年」として記憶に刻まれるでしょう。では、そんな状況下でアルコール飲料を取り扱う飲料メーカーはどのような様相を呈しているでしょうか。  国内においては、成熟産業となったビール業界。この業界の2大巨頭がアサヒグループHD(以下、アサヒ)とキリンHD(以下、キリン)です。 “ビール一本”で世界展開を図るアサヒ。飲料だけでなく医薬品を強化し多角化しているキリン。いわばビール業界の巨人ー阪神戦、2021年の現在の勝者はどちらでしょうか。業界事情を“一気飲み”で解説します。

「とりあえず生で!」は令和の絶滅危惧種ワードか

森高千里

森高千里「気分爽快」

〈飲もう〜! 今日はとことん付き合うわよ〜♪〉  このCMでお馴染みだった森高千里さんの22枚目のシングル「気分爽快」がリリースされたのが1994年。この曲はアサヒビールのCMに起用され、ロサンゼルスドジャースの野茂英雄投手の活躍とともに話題となりました(「野茂」と「飲もう」)。  実は、ビール系アルコール飲料の市場規模のピークはまさに森高千里さんがこの曲をリリースした1994年でした。ちなみに、ビール系アルコール飲料とは、ビールのほか、発泡酒、第3のビールを含んだ飲料のことです。この年のビール系アルコール飲料の年間出荷額は5億7,200万ケース。これがどれほどの規模だったかは、その後の衰退を見れば明らかです。  1994年をピークに年間出荷額は年々減少を続け、2019年は計3億8458万ケースと、15年連続で前年を割り込んでいます。そして、今や「ビール離れ」は世界的なトレンドとなっています。

自粛を促されたWHOの発表

 2010年、WHOは「アルコールの有害な使用の低減のための世界戦略」を公表しました。この発表にアルコール業界では激震が走りました。かつて、WHOは嗜好品とされるたばこの健康への悪影響を問題視して規制した過去があります。つまり、これと同じことがアルコールにも起きる可能性があるのです。  このWHOの発表を受けて、飲料メーカー各社はたばこと同じことにならないように自ら飲み過ぎを避けるよう促す取り組みを始めています。こうした「飲み過ぎ注意!」を各社が行っていることに加え、飲食店の営業自粛やアルコール提供の自粛も加わり「とりあえず生で!」はますます現象傾向に進んでいくでしょう。
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アサヒとキリン、何が違うの?
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