地域により二極化が著しい第6波エピデミックSurge初期過程
現在、半数近くの都道府県で第6波の発生または発生疑いが生じていますが、その一方で東北、甲信、北陸、四国、九州の20前後の県では終息段階(新規感染者数21日移動平均500ppb前後)や、統計上の終息を示しています。ここで状態の良い岩手県、山梨県、広島県、大分県を見てみましょう。
岩手県における日毎新規感染者数、死亡者数の推移2021/4/1-2021/11/18。新規感染者数(青)と死亡者数(黄)は片対数(左軸)。新規感染者数の7日変化率(赤)14日変化率(灰)は、線形(右軸)<NHK集計データより>
山梨県における日毎新規感染者数、死亡者数の推移2021/4/1-2021/11/18。新規感染者数(青)と死亡者数(黄)は片対数(左軸)。新規感染者数の7日変化率(赤)14日変化率(灰)は、線形(右軸)<NHK集計データより>
広島県における日毎新規感染者数、死亡者数の推移2021/4/1-2021/11/18。新規感染者数(青)と死亡者数(黄)は片対数(左軸)。新規感染者数の7日変化率(赤)14日変化率(灰)は、線形(右軸) <NHK集計データより>
大分県における日毎新規感染者数、死亡者数の推移2021/4/1-2021/11/18。新規感染者数(青)と死亡者数(黄)は片対数(左軸)。新規感染者数の7日変化率(赤)14日変化率(灰)は、線形(右軸) <NHK集計データより>
岩手県、山梨県、広島県、大分県は、広島県を除き統計上の県内終息県です。厳密には、岩手県では11/14に新規感染者1名が確認されており、県内終息に近い状態に逆戻りしています。
但し、標本抽出の限界から、統計上の終息であっても市中感染者ゼロを意味しません。少なくとも数名の市中感染者が見込まれますので台湾方式(自己隔離、接触追跡重視、検査充実率1000〜5000)か、中国方式(短期ロックダウンと全員一斉複数回PCR検査)を行えば1カ月程度で県内完全終息を達成出来ますのでその後は持ち込みを交通結節点などでの無償PCRによって抑止することとなります。これをしなければそのうち発症者の発生と増加が始まります。
広島県には、たいへんに注視すべきで広島方式とされる街頭無償PCR検査ほか、世界標準の防疫政策をサブセットであっても行っています。結果として周辺各県での感染拡大という「炎の壁」に囲まれながらもいまだに第5波の減衰を継続しています。広島県は模範例として実績を数字で残しています。
検査抑制政策の都道府県は、統計の乱れが激しく、中には分析不能の県もあります。このような都道府県は、市中感染者を大量に見逃しており、Surgeが始まると急激に新規感染者数が増加します。
筆者は、ワクチン抗体免疫の減衰、都道府県ごとの防疫政策の違い、地域性などが第6波エピデミックSurgeでは明確に現れると考えており、興味深く毎日の統計を追っています。
筆者は、昨年1月から一貫して数値によるパンデミック、エピデミックの評価を継続しています。評価を行えばある程度の予測が出来ますが、筆者は
ロスアラモス国立研究所(LANL)が公表してきた独自の成長率モデルによる評価と短期・中期予測 を高く評価し、それを徹底的に簡易化して独自に運用しています。将来的には感染症数理モデルの導入も考えていますが、現時点でその必要性はありません。
残念なことにLANLは今年9月末に評価と予測の更新を取りやめてしまいましたが、国内統計の独自分析を本格化したために入れ違いで成長率評価による国内の評価と予測を開始出来ました。
これは、
NHKが公開している全国統計と
都道府県別統計をExcelワークシートに入力することによって行っていますが、そろそろ限界なので科学・工学系数値処理ソフトウェアのOriginに切り替える予定です。博士課程在学時に育英奨学金を1カ月分注ぎ込んで購入し、維持してきたソフトウェアが、思わぬ場面で活用出来そうです。
筆者は市況分析におけるファンダメンタル分析とテクニカル分析に相当する手法を併用していますが、テクニカル分析だけでも速報に該当することは可能です。筆者は、ほぼ毎日統計分析について
Tweet していますが、投資に造詣のある人達は、「デッドクロスだ」「ゴールデンクロスだ」「これはテクニカル分析だ」とリプライを送ってくれますが、そういった視点での分析はとても面白いと思います。
市況のテクニカル分析ならば、20近い都道府県では全面全力買いの局面を示しています。しかしこれはエピデミック統計です。全面全力買いでなく、全力介入によるウイルスの抑制、早期制圧をする必要性を現実には示しています。
第5波の減衰が進んだためにBaselineが低く、10月末から第6波が始まった都道府県であっても11月中から12月中旬にかけては比較的安全と考えられます。必要不可欠な用事は早めに済ませることをおすすめします。
高性能マスク着用と換気の励行で、相当程度安全が維持出来ます。一方で、第6波エピデミックSurgeの規模(波の高さ)は、まだドミナント(主たる地位)の株が不明など、情報不足で分かりません。
筆者は、第6波は日本の半分で10/15頃に実際の感染拡大が始まっており、第6波の極大期は1月中旬以降、社会への影響は12月中旬以降に始まると考えています。ただし、情報不足でSurgeの規模(波の高さ)は分かりません。悪いことに年末までには接種完了者の半分で感染を回避する抗体免疫は事実上無効になっていると考えられます。
いまから十分な備えをしてください。特に医療従事者は、今のうちに体と心を休めることを優先してください。
<文/牧田寛>
まきた ひろし●Twitter ID:
@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについての
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