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またしても無意味な政府の新型コロナ対策。「内閣官房モニタリング調査」が使い物にならないワケ

第5波エピデミックSurgeはなぜ収束したか?

コロナウイルス

写真はイメージです

 3月から5月にかけてインドを大混乱に陥れ、全世界に広がり猛威を振るったδ株によるエピデミックSurge(波)は、先行したインドや英国と同じく急激かつ巨大な津波となりましたが、あっけなく萎んでしまいました。  第5波は、その波の急峻な高さから本邦ほか世界各地で医療崩壊を起こしましたが、津波が退く様に短期間で退いてしまいました。また免疫回避を起こすと考えられる変異を持つ割に死者が少なかったと言えます。  死者数が少ない理由は、ワクチン接種の寄与が高いと考えられ、実際に合衆国では、δ株による死者の99%以上が非接種者であるとCNNで報じられています*。本邦でも、前回記述したように6月以降の致命率は0.4〜0.5%程度に留まる見込みで、以前に比して1/4以下に下がっています。但し、第5波による死者の集計は沖縄などで著しく遅れており、11月末までは確定しません。 <*More than 99% of the US’s Covid-19 deaths in June were among unvaccinated people, says Fauci 2021/07/12 CNN
全国の百万人あたり日毎新規感染者数と一週間・二週間変化率、全国の百万人あたり日毎死亡者数

全国の百万人あたり日毎新規感染者数と一週間・二週間変化率、全国の百万人あたり日毎死亡者数
(2020/02/13〜2021/10/04 NHK集計による)

 NHKが集計した統計をもとに筆者が作成したグラフを示します。左軸は片対数で、新規感染者数(青)と死亡者数(黄)で、右軸は線形で、日毎新規感染者数の一週間変化率(赤)と二週間変化率(灰)を示します。  現在、日毎新規感染者数は半減期7日前後で指数関数的に減衰しており、順調に推移すれば今年6月のBaselineを下回り昨年9月のBaselineまで下げる可能性があります。本邦におけるCOVID-19エピデミックでBaselineが下がるのは初めてのことで、たいへんに好ましいことです。地域によっては、昨年5月の水準まで下げる可能性が見えてきており、台湾、シンガポール、豪州、ニュージーランドで実績を積んできた手法を導入すれば、年末までに終息=「ゼロ・コロナ」達成も可能です。  但し西日本の一部では、下げ止まりや増加を示していますが現在重点観測と分析中です。  拙書、『誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか』でも強調しているように、統計は過去と現在の鏡であり、未来を照らす松明と言えます。筆者は、2020年12月の第3波ころからSurgeの発生と増加を公開統計を用い実用精度で予測できるようになりましたが、これは2020年2月から統計を追っていたためです。一方、減衰に転じる時期についてはまだ十分な精度を得られておらず、第5波では予測より2週間早く減衰に転じ、結果として大惨害を避けられました。2週間の差は、感染者数にして最大で5万人/日の差となりますので約140万人の感染が回避され、約7千人の死亡が回避されたことになります。このわずか二週間の差で、本邦はインドの2/3の規模の人口比修正感染者数ですみました。 この理由は、2021年7/22からの移動傾向(モビリティ)の低下、四回の台風襲来、夏休み、お盆休み、例年より早い秋雨など、運の良さによるものが主であると考えられます。これらをワクチン接種が後押ししたのでしょうが、今後の研究を要します。

モニタリング検査とは

東京都モニタリング検査」*と「内閣官房モニタリング検査」**という言葉が第5波渦中に新聞紙面などで時折見られました。内閣官房モニタリング検査は、2021年2月頃から目にするようになり、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査が無料で受けられるとして大学などの参加が目立ちました。 <*東京都による羽田空港での新型コロナウイルス感染症モニタリング検査の実施について2021/09/16 羽田空港旅客ターミナル> <**感染拡大の予兆の早期探知のためのモニタリング検査 内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室>  東京都モニタリング検査について8月に取りあげましたが今回は、内閣官房モニタリング検査をご紹介します。  内閣官房モニタリング検査は、「感染拡大の予兆の早期探知」の為に行われており、14都道府県の空港や大学、交通結節点、繁華街など人の集まるところでCOVID-19の自覚症状のない人を対象に行われています。検体は唾液で、検査は株式会社木下グループの検査キットが採用されていることは分かっています*。これは筆者も使っており、往復送料を含めて3000円程度で検査が出来ます。 <*木下グループ、内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策に協力「羽田空港等から北海道・沖縄県内の空港へ向かう便の搭乗者を対象としたモニタリング検査」2021/07/20 時事 東京都モニタリング検査もそうですが、内閣官房モニタリング検査は、統計からSurgeの兆候や発生地を検知して迅速に対応することを目的としています。これは妥当な目的ですので実際の統計を見てみましょう。今回使用するのは、2021/09/30公開のデータですが、非常に使いにくいため、Twitterアカウント @touture425氏から、使いやすくしたデータをご提供頂きました。
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内閣官房モニタリング検査の結果を解析していく
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まきた ひろし●Twitter ID:@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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