虎ノ門横丁の仕掛け人、誕生秘話を語る。高級、老舗の“名店の味”を大衆価格で
赤提灯が並ぶ路地。大衆居酒屋や屋台などの飲食店が連なり、独特の雰囲気を醸し出す「横丁」は、“せんべろ”や“はしご”を愛する人たちにとって聖地だ。東京では、のんべい横丁(渋谷)やゴールデン街(新宿)などの古き良き昭和の歴史を感じる横丁が有名だが、時代とともにその文化は進化を遂げている。
近年では、渋谷横丁 in RAYARD MIYASHITA PARK、カオス キッチン(渋谷パルコ地下)、JINGUMAE COMICHI(原宿)、日比谷オクロジなど、新たな「ネオ横丁ブーム」が巻き起こっているのだ。
そんななか、虎ノ門ヒルズにある虎ノ門横丁は昨年6月に開業以来、多様な人々に支持される横丁としてブームを牽引している。
かつての横丁いえば、下町情緒感じる軒先や高架下のお店で肩が触れるほどの空間に密集し、串焼きや煮込みなどの食とお酒を酌み交わすイメージが強かった。
サラリーマンが足繁く通い、日頃のストレス発散やコスパ良く飲める居場所を求め、日夜横丁に集まってくる——。
そんな横丁のイメージを変えるきっかけになったのが2008年に誕生した恵比寿横丁だ。横丁の持つ大衆さや昭和レトロな雰囲気に加え、トレンドな食を取り入れたことで“おしゃれでイケてる場所”と次第に認知されるようになったのだ。
塚本さんは「恵比寿横丁ができたことで、感度の高い女性に支持されるようになった」とし、横丁の変遷についてこう述べた。
「昔の横丁は一見さん、特に若い客層はお店に入りづらい雰囲気がありました。それが、建物の中にお店が複数並び各店舗の入口の壁が取り払われた恵比寿横丁では、気軽にお店へ入ることができ、かつ横丁気分を味わいながら美味しい食とお酒を楽しめるため、女性が横丁に来るようになったんです。
そして、『インスタ映え』などSNSに映える写真を投稿する目的としても横丁に集うようになり、『渋谷肉横丁』や『赤坂バル横丁』、福岡の『三百歩横丁』など全国に広がっていったんですね」
横丁ブームが盛り上がるなか、虎ノ門横丁の計画は2017年から始まったという。
虎ノ門駅周辺は金融関係や法律事務所、コンサルティング会社などが集積する東京でも有数のビジネス街である。
日々多くのビジネスマンが忙しく行き交い、仕事が終われば近場の飲食店へ飲みにいく一定の流れは生まれていた。
しかしビジネス街ゆえ、夜遅い時間帯や土日は閑散としてしまうのが常で、どうしても虎ノ門駅の利用シーンが限られてしまっていたのだ。
そこで、「虎ノ門ヒルズへ目的を持って来てもらうお客様を増やしたい」という思いを持って虎ノ門横丁の開発を進めてきたと塚本さんは言う。
「実は虎ノ門横丁を計画し始めた2017年ごろは、横丁ブームとともにフードホールブームも台頭していました。NEWoMan新宿のフードホールなど、海外のテイストを取り入れたモダンでおしゃれな食スポットとして発信していく潮流が生まれていたんです。
ただ、計画当初より『虎ノ門から食文化を発信する』という考えを抱いていたので、大型店を誘致しただけでは、場の地力にはならないだろうと感じていました。
そこで、通常の飲食店誘致のやり方ではなく、あえて普段は行きづらいような名店を集めて、虎ノ門横丁ならではの価値を生み出そうと考えたんです」
海外のトレンドを取り入れたフードホールを軸に飲食店街を作ることも当初は想定に入れていたそうだ。
今回は虎ノ門横丁を運営する森ビル株式会社 商業施設事業部の塚本雅則さんに、横丁ブームの変遷や直近のトレンドについて伺った。
恵比寿横丁がきっかけで女性にも支持される横丁が増えた
当初は海外で流行だったフードホール業態にする構想もあった
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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