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電車内での凶行に遭遇したらどうすべき?トラブル対処マニュアル

刃物を持った相手に対応する方法

 元自衛官で、退官後に米国軍事会社でスナイパーとして中東の戦場を経験したOS氏が、刃物を持った相手に対応する方法を次のようにレクチャーする。 「恐ろしくてすくんでしまう人は、闘う必要はまったくありません。端の車両にいて逃げ場がない、守るべき人がいるなどのやむを得ない状況で、なおかつ頭に『闘う』という選択肢が浮かんだ人だけが立ち向かうべきです」
電車内トラブル対処マニュアル

刃物が有利な距離外からスマホ、ステンレスボトル、缶ジュースなど持ち物を投げるのは有効な抵抗手段。投擲者や物は多いほどいい

 そうと決めたら、まずは、目的を明確にすることが重要だという。 「駅に到着する気配があれば、数分時間を稼げばよい。対峙する際は、バッグなどを盾にして胴体を隠すことは必須です。時間稼ぎならば、盾と同時に持ち物のうちスマートフォンやACアダプタ、ステンレスボトルなどを投げつけるのも非常に有効です。このとき声をかけて、できるだけ大勢で対処するのがいいでしょう」(OS氏)
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OS氏によると、刃物による傷が致命傷になるのは腹部を刺された場合が多いため、しっかりガードする

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体から少し浮かせることで、貫通してもダメージを受けない。ノートPCが入っていれば頼もしい

 3人でバッグを持って立ち塞がれば、通路を塞ぎ、後ろの人を守ることができる。犯人は刃物を持っていることで圧倒的に有利な立場だが、立ち向かう側は、数の優位を生かして威圧することで相手の動きを止める可能性が高まる。 「無力化するためには凶器の排除が必要です。バッグを盾にした状態で一気に距離を詰め、死に物狂いで凶器を持った手を押さえます」
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刃物を持った人物の無力化は、この形に持っていくことを目的とする。手を掴んでも安心せず反対側の手に持ち替えられないよう注意

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ここでも複数人で協力して行うと効果的だ。この後協力を仰ぎ4、5人で両手両足を押さえ込み、刃物や犯人の荷物を遠ざける

声をかけて協力し合うことの必要性

 ただし、訓練を受けた人間でも手や顔などに切り傷を負うことは避けられないため、心構えが必要なようだ。前出の加藤氏が話す。 「本当に殺す気がある人間が持っている刃物は大きく見えるんです。想像以上に恐ろしいということを認識した上でイメージトレーニングをしてください。そうじゃないといざというときに動けません」
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このような暴行を止めるには、過剰防衛の恐れもあるが全力で立ち向かう必要がある。友人や家族が襲われたらやるしかない……

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後ろから不意を突いて襟や髪を掴み、後ろに思いっきり引くと、引き剥がすことができる。OS氏ならその後、腹に打撃を加えるという

 京王線に乗り合わせたS氏はヘッドホンをして気がついていない人に「火事です! 逃げて!」と声かけをしながら逃げた。また、JR学研都市線で非常通報ボタンを押したNさんは、複数人で救助にあたり「素晴らしい行動力を持った人が何人もいることが知れてよかったです」と述べている。  一人で行動に移すのは難しくても、何かできることはないかと思う人は少なくない。まずは、声をかけて協力し合うことが電車内のトラブル対処には必要だろう。 【交通技術ライター・川辺謙一氏】 東北大学大学院工学研究科修了、化学メーカー勤務後に独立。技術系出身の経歴を生かし、交通分野で高度化した技術について執筆 【暴犯被害相談センター・加藤一統氏】 1995年より身辺警備に従事し、900件以上の警護依頼を請け負う。優良なボディガードや探偵の無料紹介所「ボデタンナビ」を主宰 【元・民間軍事企業スナイパー・OS氏】 陸上自衛隊を任期満了後、オーストラリアで狙撃手の訓練を受講。民間軍事企業(PMC)に勤務し中東で任務に。退役し現在は会社員 取材・文/池田 潮
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