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いま買ったら損する? 高級腕時計の価格が上がり続ける状況はバブルなのか

いくらだったら欲しいのか

高級腕時計

2018年から現在までの値動き事例(例:パテックフィリップノーチラス5712/1A-001)

 このような腕時計の現在を見て、かつての相場を知る方の一部は、「今は高すぎるから買いたくない」とおっしゃいます。  そこで私は、彼らが「いくらぐらい」だったら「買い」だと思っているのかを独自調査したところ、旧世代のステンレスデイトナ(116520)を例とするならば「200万円以下ぐらい」という意見がありました。  ここで、私は「意外にも結構高い金額を提示した」ということに驚きます。116520の定価は、かつて100万円程度だったわけですから、そのぐらいの金額ならば「割高感がない」のかと思いきや、その倍は出すと言っているのです。  多くの腕時計の相場を長年見つめてきている私は、116520が、どの時点で200万円超えになったかを即座に答えられるのですが、それは“いつ”なのかというと1年前のことであります。  そして、その1年前時点でも、多くの腕時計は「過去相場と比べると高い」といった感覚だったわけで、「今は高いから買いたくない」といった意見も当然ありました。もちろん、その時点でも「バブル」と言われていたことに変わりありません。  むしろ、私が「腕時計投資のすすめ」という本を出した2015年時点でも、多くの腕時計は「高すぎる」とされており、「バブル」と言われていたわけです。  では、2015年時点のデイトナ116520水準はどのぐらいだったかというと、110万円程度といったところでした。もしも今、誰かが「自分のデイトナを110万円で売る」といったならば、多くの人が「安い」と思うことでしょう。  実際、今110万円でデイトナを買うことができたならば、そのまま買取店に持っていくだけで「大きな儲けが出る状態」となってしまうはずです。

「高い」「安い」は常に変わる

 2015年時点では110万円が「高い」という感覚だったわけですが、今となってのそれは「安い」に変わってしまっていることが分かります。  つまり、同じ110万円という金額でも、「高い」、「安い」といった感覚は、変わってしまうのです。  ですから、今530万円台となっているデイトナ116500LN白文字盤も、もしも今後、さらに高くなったならば、「あのときは安かった」という意見に変わりかねません。  実際、パテックフィリップノーチラスの5711/1A-010はその最たる例だといえます。  このモデルは、2017年春頃の中古最安値が300万円程度だったのが、2019年時点では800万円以上という水準に達していました。そのため、その時点ではものすごく割高感があり、「こんな金額続くわけがない」と意見する人も多々いたわけです。  そして、その後下落トレンドが発生したことによって、見事にノーチラスは下落。長らく600万円台といった水準が続いていました。  しかし、2021年になると、1000万円以上に上昇。そして、2022年2月現在では、2600万円台となっているのです。  もはや今の感覚では、5711/1A-010が800万円台だった頃が「安く」感じてしまうことだと思います。私も、思考せず、感覚的に捉えたならば「700万円ぐらいのときは安かった」などと思ってしまいます。  しかし、実際に700万円程度だったときには「高すぎる」という感覚だったわけです。
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バブルではないという結論に
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1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

もう新品は買うな!もう新品は買うな!

もう大量消費、大量生産で無駄遣いをするのはやめよう


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