デジタル

任天堂が抱える「3つの懸念」。Switchの販売台数も頭打ちに

 

(2)サブスク型娯楽への対応

Netflix

加入者向けに無料でスマホゲーム提供を開始したNetflix

 日本にもすっかり定着した、定額でサービスを一定期間利用できる「サブスクリプション型」料金体系。動画配信サービスだけでなく、今では多くのビジネスに波及しています。ゲームも当然サブスクの対象となりうるコンテンツ。実際に、Netflixは加入者向けにスマホゲームの提供を2021年11月から全世界で開始しました。  任天堂も定額サービス「Nintendo Switch Online」を展開していますが、基本的にはオンライン利用料であり、ファミコン・スーファミの過去作フリープレイは特典的な位置づけ。仮にメタバースとサブスクが結びつき、「新作のゲームが発売されたら購入する」という購買スタイルが過去のものになるとしたら、任天堂も何かしらの手を打つ必要が出てくるでしょう。  ちなみに、2021年10月から始まったNINTENDO64とメガドライブのゲームが遊べる「Nintendo Switch Online+追加パック」は、『マリオカート8 デラックス コース追加パス』などの「コンテンツの充実に伴って加入者が増加した」と2022年3月期決算説明資料に記載があります。こうしたヒットタイトルの追加パックを配信するという手法が、任天堂型サブスクの鍵を握りそうです。
Nintendo Switch Online+追加パック

人気タイトルの追加コンテンツが無料でDLできる「Nintendo Switch Online+追加パック」の公式サイト

(3)新ハードへの切り替えの難しさ

Nintendo Switch

2021年10月に発売されたNintendo Switch(有機ELモデル)公式サイト

 Nintendo Switchが発売されたのは2017年3月。一般的に家庭用ゲーム機のライフサイクルは5~7年と言われており、そろそろ新ハードの情報が出るという噂もささやかれています。しかし、これだけNintendo Switchがヒットしていると、単純な新ハードへの切り替えにはリスクが伴うでしょう。  直線的なスペック進化を歩んできたPS系ハードと異なり、ニンテンドーDSなら上下2画面、Wiiなら直感型操作といった具合に、新味あるコンセプトを盛り込んできた任天堂ハード。しかし、このコンセプトが空振りに終わると、ハードが売れず、看板のソフトも不振に陥ります。  思えば、Nintendo Switchのコンセプトは新しい遊びの創造というよりは、据置機と携帯機の垣根をなくすという利便性に対する提案でした。新ハードには、任天堂らしいユニークなアイデアを付加できる余地や余裕はあるのか。成功したNintendo Switchの寿命を引き延ばす戦略が現実的かもしれません。
スプラトゥーン3

2022年9月9日発売予定の『スプラトゥーン3』公式サイト

 3つの懸念を見てきましたが、ソフトに関しては、2021年11月発売の『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』が1465万本、2022年1月発売の『Pokemon LEGENDS アルセウス』が1264万本とそれぞれ1000万本以上の販売を達成。今年の9月には『スプラトゥーン3』、冬にはオープンワールドの完全新作『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』も控えています。  ソフトの絶好調を背景に、メタバースへの対応や新ハードの問題をどうクリアしていくのか。舵取りに注目が集まります。 <文/卯月 鮎>
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も
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